1: 名無しで叶える物語(笑) 2018/02/06(火) 01:58:17.22 ID:nkFfvK5v
ちょっとあれだったので練り直しました

4: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:02:37.14 ID:DW5FPWJj
キャプテンの高坂穂乃果は円陣を組む中、体育館に溢れる歓声と熱気の混じった空気を目一杯に吸い込む。

穂乃果「みんな…ついに決勝戦だね…」

そう言うと、穂乃果の両隣で肩を組んでいる彼女の幼馴染たち――南ことりと園田海未が穂乃果に目をやる。

ことり「穂乃果ちゃん、緊張してるの?」

穂乃果「うん、ちょっとね…」

海未「大丈夫ですよ、穂乃果。私たちが一緒ですから」

穂乃果「海未ちゃん…」

凛「そうにゃそうにゃ! それに今さら緊張したって仕方ないにゃ」

花陽「そ、そうだよね…よし! 頑張るぞ!」

真姫「あら、花陽にしてはなかなかいい感じじゃない。期待してるわよ」

そう言って一年生の星空凛、小泉花陽、西木野真姫はお互いに見つめ合い、そして笑い合う。

にこ「あんたたち、少しでも手を抜いたりしたらただじゃおかないからね?」

希「誰も手を抜いたりなんかせえへんよ、にこっち。それよりみんな…今日は楽しもうな?」

絵里「希の言う通りよ。今日は精一杯…楽しんで戦いましょう!」

三年生の矢澤にこ、東條希、絢瀬絵里は、三年生らしく、メンバーを鼓舞し、励ます。
そして…

穂乃果「よーし、それじゃあみんな、いくよー! いち!」

ことり「に!」

海未「さん!」

真姫「よん!」

凛「ご!」

花陽「ろく!」

にこ「なな!」

希「はち!」

絵里「きゅう!」

「「「「「「「「「μ’s! ミュージック、スタート!」」」」」」」」」

5: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:03:22.30 ID:DW5FPWJj
一方、もう一つのチームでは、キャプテンの高海千歌、そして幼馴染の渡辺曜や親友の桜内梨子をはじめとする九人が円陣を組んでいた。

千歌「やっとここまで来たんだね…!」

梨子「ええ…ここまで来たなら、もうやるしかないわね」

曜「そうだね! 全速前進…ヨーソロー!」

そして一年生トリオの津島善子、国木田花丸、黒澤ルビィもいい緊張感の中で互いに励ましあっていた。

花丸「ルビィちゃん、善子ちゃん、いよいよずらね…」

ルビィ「き、緊張するね…」

善子「大丈夫よルビィ、いざとなったら私のダークスマッシャーで敵なんかイチコロよ…あとヨハネ」

三年生たち――黒澤ダイヤ、小原鞠莉、松浦果南は凛とした佇まいで冷静にその試合への闘志を燃やしている。

ダイヤ「いよいよ決勝戦、相手は音ノ木坂学院バレー部、通称『μ’s』…相手にとって不足はありませんわ」

鞠莉「大丈夫だよ、こっちには果南がいるじゃない」

果南「そんなあてにされても困るな…でも、全力でやるよ」

千歌「じゃあいくよ…いち!」

曜「に!」

梨子「さん!」

花丸「よん!」

ルビィ「ご!」

善子「ろく!」

ダイヤ「なな!」

果南「はち!」

鞠莉「きゅう!」

「「「「「「「「「Aqours! サンシャイン!」」」」」」」」」

6: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:04:19.15 ID:DW5FPWJj
そして第1セットが始まった。

絵里「いくわよ…!」

サーブ権はμ’sからだ。
絵里は高くボールを投げる。

千歌「いきなりジャンプサーブ!?」

絵里「いっけー!」バシ-ン!

鞠莉「任せて!」パシン!

鞠莉(くっ、重い…けど!)

鞠莉「上がったー!」

裏エース・絵里の放った強烈なジャンプサーブは、Aqoursの誇るリベロ・鞠莉のレシーブによってなんとか上に上げられた。
そして乱れたものの、その落下点にすかさずセッター・曜が入り込む。

曜「オッケー! いくよ千歌ちゃん!」

千歌「いいよ、曜ちゃん!」

曜からレフトエース・千歌へと、やや低めのトスが送られる。この低さ、千歌の大好物である。曜は千歌がどんなときにどんなトスが打ちやすいか、完全に理解していた。それは幼馴染で毎日一緒にバレーをしていたから、言わずとも自然に分かるようになったものである。
そして当然、トスが低いということはボールが千歌のところまでたどり着くのも早くなる。したがって、μ’sのブロックも遅れてしまう。

千歌「いっけえー!」バシン!

そして千歌の打ったボールはμ’sのコートの床を叩く。これで1-0というわけだ。

7: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:06:53.94 ID:DW5FPWJj
千歌「やったー! ナイストス、曜ちゃん!」

曜「千歌ちゃんも、ナイスキー!」

千歌「次は曜ちゃんのサーブだね。ナイスサーブ、期待してるよ!」

曜「うん、任せてよ!」

そして曜はボールを受け取ると、ラインの後ろまで下がり、一旦目を閉じる。

曜(せっかくみんなと…千歌ちゃんとここまで来れたんだ…! 絶対に勝ってみせる!)

ピーッという笛と同時に、曜は目を開け、助走を踏み始める。そして軽くジャンプして…打つ!
ボールは回転せずにゆらゆらとぶれながら相手コートに入る。そう、いわゆる無回転サーブというやつだ。ジャンプサーブに比べれば威力は弱いが、その分球がぶれるので、こちらの方が取りにくいという人も多い。
そんなサーブがμ’sのコートに侵入する。
が、こちらのリベロも負けてはいなかった。

凛「いけるにゃ!」パシン

凛「上がったよ!」

凛(こんなの、かよちんのサーブに比べればどうってことないにゃ)

8: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:08:03.98 ID:DW5FPWJj
このチームのリベロ・凛は、ベンチで応援をしているピンチサーバー・花陽と幼馴染だ。
彼女たちは中学からバレーを始めたが、暇な時間や空き時間があればいつもそこで花陽がサーブ、凛がそのレシーブをしていた。
するといつのまにか、花陽はサーブに、凛はレシーブに特化した選手となってしまったのだ。
そして上がったボールはセッター・希の頭上へとジャストで落ちていく。

希「ナイスや、凛ちゃん!」

希(ここは…真っ向勝負や!)

希「穂乃果ちゃん!」

希はレフト方向へと大きく放物線を描いたトスを上げる。これはエース・穂乃果への『好きに戦ってこい』というメッセージだ。
そしてそれを受け取った穂乃果はゆっくりと助走を踏み始める。そして跳んだ――いや、飛んだ。それはまるで翼が生えているかのようなジャンプだった。

穂乃果「たあー!」バシン!

そしてAqoursの方もブロックは二人いた。十分に間に合うトスだった。しかし、無情にも穂乃果の打ったボールはAqoursの側の床を叩く。これで1-1となった。

希「いいやん!」

穂乃果「やったね!」

ダイヤ「な、なんですの、あのジャンプ力…」

千歌「さあさあみんな! 切り替えていくよ!」

9: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:09:17.12 ID:DW5FPWJj
そしてその後も両者譲らぬ攻防が続き…8-8、サーバーはセンター・真姫。

真姫「ここは…あそこよ!」

真姫の打ったボールは若干のぶれを伴いながら前衛にいる同じくセンター・善子のところに落ちていく。

曜「善子ちゃん、こっち!」

善子「だからヨハネ!」パシッ

曜「ナイス善子ちゃん…梨子ちゃん! お願い!」パスッ

梨子「任せて!」パシン!

海未「大丈夫…さわれます!」

なんとかそれにワンタッチしたのが真姫の対角にいるセンター・海未だ。
ワンタッチしたボールは絵里のところへと行く。

絵里「はい、希」パスッ

希「いくよ…にこっち!」パスッ

にこ「任せな…さい!」パシ-ン!

鞠莉「オーケー、取れるよ」ポスッ

曜「お願い…千歌ちゃん!」パスッ

千歌「任せて…おりゃあ!」バシッ!

そしてボールはμ’s側のコートに落ち、Aqoursに得点が入る。
こうしてさらに激しい攻防が続いていった。

10: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:10:08.86 ID:DW5FPWJj
穂乃果「はぁ…はぁ…」

千歌「はぁ…はぁ…」

そしてついに23-24、μ’sのアドバンテージだ。
サーブは…絵里に代わって、ピンチサーバー・花陽!

花陽(みんなが繋いできたボールなんだ…なんとしても、決める!)

花陽は助走を取らず、その独特のフォームで構える。そして笛が鳴ると同時に…打つ!
そのボールは激しくぶれながら…梨子のところへと向かった。

梨子(な、なんなのこのサーブは! ぶれが強すぎて…うまく上がらない!)バシン!

梨子「ごめん、曜ちゃん!」

梨子が弾いたボールはコートを大きく超えて後ろに行く。

曜(なんとか届くには届く…けど…オーバーでは上げられない…こうなったら…!)

11: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:11:54.97 ID:DW5FPWJj
曜「果南ちゃん!」ポ-ン

ボールは大きく上に上がりアタックラインめがけて落ちていく。そしてそこには…

果南「おーけー、任せな!」

なんと、曜は裏エース・果南のバックアタックを狙ったのだ。後ろからのトスというのは普通のトスと比べて遥かに打ちにくい。
しかしそれができるのはやはり、果南に対する圧倒的信頼があってのものだろう。
それは曜と果南が幼馴染であるというのもあるが、やはり果南の実力への信頼が大きいだろう。

果南(このボール…絶対に繋ぐ!)

この松浦果南、スパイクに関してのみならば、Aqoursの誰よりも上手い。そう、エース・千歌よりもだ。
彼女はずっと、スパイクだけを練習してきた。
しかもそのトスはいろいろな人に、いろいろな位置から上げてもらうようにして、どんなトスが来ても対応できるように練習していたのだ。
となれば、この曜からの難しいトスも、果南にかかればいつものトスと同じだ。果南はやや笑みすら浮かべながら助走を踏む。そして踏み込んで…ジャンプする!

果南「っらぁ!」バシン!

花陽(なんてスパイク…いや、その前にあのトス…アンダーだったけどすごい精度だよ…)

12: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:12:50.47 ID:DW5FPWJj
にこ「任せて!」パシン

すかさずボールの落下点に入ったライトアタッカー・にこがボールを上げる。にこはレシーブでは凛に次いで上手だ。そしてスパイクは二段トスもそこそこできるため、このオールマイティな技術が求められるポジションであるライトアタッカーになったのだ。

果南「ちっ…」

にん「ふん…伊達に3年間バレーしてきたわけじゃないのよ」

そして上がったボールは希のもとへと落ちていく。

希「ナイスレシーブ、にこっち!」

希(さて、前衛には真姫ちゃんと穂乃果ちゃん…普通だったらここはエースの穂乃果ちゃんに任せるんやけど…今は!)

希「真姫ちゃん!」

希はボールを自分のすぐ横に上げた――というより、置いた。
そしてすでに跳び上がっていた真姫がそれを…叩きつける!
そう、これがいわゆる速攻だ。
身長の高い真姫だからこそできる攻撃方法である。
Aqoursの側の真姫へのマークは一枚、ダイヤだけだ。そしてそのブロックは…間一髪間に合った!
ダイヤの指先に触れたボールはそのまま鞠莉のところへと落ちていく。
鞠莉はそれを正確に曜のところへと上げる。

曜(ここは千歌ちゃんに上げたいところ…でも)

曜「さっきのお返しだよ…ダイヤちゃん、お願い!」

すでに跳んでいたダイヤのもとにボールを直で届ける。そう、Bクイックだ。Bクイックとは、先程真姫がやった速攻――つまりはAクイックとは違い、少し離れたところから速攻を打つやり方だ。

ダイヤ「任せなさい!」

そして…打ち込む!

ダイヤ「はぁ!」バチン!

13: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:14:15.24 ID:DW5FPWJj
ボールはそのままμ’s側のコートに落ち、24-24、つまりデュースとなった。
ここで先程サーブを打った花陽と絵里が交代する。
そしてAqoursのサーブ、サーバーは曜だ。

曜(さっきの花陽ちゃんのサーブ、凄かったな…でも私だって…あれの半分くらいのぶれは出せる!)

曜「いけ!」バシッ!

曜の打ったボールは、なるほどたしかに、先程の花陽のサーブの半分ほどの揺れを伴うサーブになった。
半分、というとすこし弱そうに思えてしまうかもしれないが、そうではない。むしろ先程のサーブの半分もぶれているならば、なかなか取りにくいサーブになるだろう。
逆に言えば、それくらい花陽のサーブはぶれたのだ。

凛「大丈夫、とれるにゃ」

そしてこのブレ球は凛がしっかりとレシーブする。

曜「くそっ…」

希(凛ちゃんはやっぱりうまいなあ…じゃあうちもちょっと仕掛けようかな)

希(穂乃果ちゃん、真姫ちゃん、ちょっとごめんな…うちも出しゃばりたいときくらいあるんよ…!)

希はどちらに上げるのか、Aqoursはそれに目を凝らした。しかし希は、どちらにも上げなかった。
ヒョイッ、と、そのままボールを下に落としたのだ。そう、ツーアタックだ。
これにはAqoursも意表を突かれた。その球には誰も――近くにいた梨子さえ反応できず、ボールは床にポトッと落ちてしまった。

14: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:15:08.50 ID:DW5FPWJj
梨子「こ、ここでツーを使ってくるなんて…」

この失点はAqoursにとってかなり痛かった。
これで24-25。再びμ’sにアドバンテージだ。
ちなみにこの決勝戦、先に2セット取った方が勝ちである。なので最初のこの1セット、なんとしても取りたいというのが両者の本音であろう。
そして今度はμ’sのサーブだ。サーバーは希。

希(さて、どこを狙おうかな)

希(ここはやっぱり…真剣勝負や!)パシン!

希の打ったボールは…果南めがけてまっすぐに進む!

果南(ちぇっ、やっぱり狙ってきたか…)

希(だって、スパイク以外はあんまり上手くないみたいやし)

果南「うっ」バチン!

果南「ごめん、カバー頼む!」

鞠莉「オーケー、任せて!」

鞠莉の上げたボールはそのままμ’sのコートに帰ってくる。

穂乃果「よし、チャンスだよ!」

凛「希ちゃん!」パシッ

希「じゃあ…任せたよ、穂乃果ちゃん!」パスッ

穂乃果「うん、任されたよ!」

そして穂乃果は飛ぶ。もはや今、穂乃果には敵がいなかった。目の前に開かれたコート、その空いているところにボールを落とせばいいだけなのだから。そして…

穂乃果「いけえええ!」バシ-ン!

1セット目は、μ’sが獲得したのだった。

15: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:15:43.16 ID:DW5FPWJj
Aqours陣営

花丸「みんな、お疲れ様ずら」

ルビィ「はい、ドリンクどうぞ」

千歌「ありがとう~」

ダイヤ「それにしても、穂乃果さんのあのスパイク…あれをどうにかしないことには、こちらに勝ち目はありませんわね…」

果南「そうだね…あれにはブロックを増やすよりはレシーブに徹した方がいいかも」

鞠莉「果南の言う通りだね。あそこはブロックは一枚にしてあとはレシーブに回った方がいい」

曜「あと、さっきは完全にやられたけど、ツーも警戒しといた方がいいよ…多分そうやって自分の方に注意を向けさせてスパイカーに自由に打たせるのが狙いなんだろうけど」

梨子「それと、あまりあのリベロは狙わないようにね。あの子、相当うまいから」

千歌「…よし、じゃあだいたいの作戦が決まったところで、2セット目、頑張ろう!」

善子「…って、ちょっと! 私にも喋らせなさいよー!」

16: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:16:28.43 ID:DW5FPWJj
μ’s陣営

ことり「お疲れ様、みんな♪」

花陽「お疲れ様です」

希「ふぅ…なんとか1セット取れたね…」

絵里「ええ…でもギリギリだったわ」

にこ「ちょっと希ー、もっとにこに回しなさいよねー」

海未「それよりも、あの果南という方、レシーブはあまり上手くありませんが、スパイクは穂乃果や絵里と同じくらい…いや、それ以上にうまいかもしれません」

穂乃果「穂乃果、あんなバックアタック打てないよー」

凛「まあ、凛だったら取れるけどね」

真姫「こら、調子良かったからって調子に乗らない」

穂乃果「それじゃ…第2セットもみんな、ファイトだよっ!」

18: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:17:05.09 ID:DW5FPWJj
第2セットが始まった。
サーブはAqoursの果南からだ。
果南は大きくボールを放り投げる。ジャンプサーブだ。1セット目に絵里がしたもののお返しだと言わんばかりに力強く打つ。

果南「いっけぇー!」バシッ!

果南の打ったボールはにこに目掛けて一直線にドライブ回転をかけながら向かっていく。
しかし、これは失敗だった。なぜならこのサーブ、にこは慣れていたからだ。
なぜかといえば、絵里がジャンプサーブを練習する際、必ずにこにレシーブに入らせていたからだ。
おかげでにこはジャンプサーブにはすっかり慣れてしまった。

にこ「これくらいなら…!」バシッ!

にこ(絵里のよりもちょっとだけ強いくらいね。にこには余裕だわ…)ヒリヒリ

希「にこっちナイス!」

希(最初はやっぱり…)

希「穂乃果ちゃん!」パスッ

穂乃果「いっくよー…それぇ!」バチ-ン!

穂乃果が打ったボールはブロックにも当たらずにAqours側のコートに落ちる――はずだった。

鞠莉「もらったー!」

そこで穂乃果のボールを間一髪で拾ったのが鞠莉だった。そのまま上がったボールは千歌の方へ飛んでいき…

千歌「…いくよ!」

そのまま打った! ボールはμ’sのコートの床を叩く。Aqoursのポイントだった。

19: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:17:46.55 ID:DW5FPWJj
千歌「やったー!」

鞠莉「やりましたネ!」

希「あちゃー、やっぱり対策してくるよなー」

凛「対策って?」

希「ほら、さっきの穂乃果ちゃんのスパイクのとき、ブロック一枚しか無かったやろ?そのかわりにレシーブの人数増やして、ブロックで止めれないならレシーブで取れる確率を増やそうってこと」

凛「な、なるほど…じゃあ、穂乃果ちゃんのスパイクがピンチだね?」

希「うーん、まあ、そうやね…」

希(仕方ない、あれ使うか…)

希「絵里ち、ちょっと…」

20: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:18:44.19 ID:DW5FPWJj
試合が進み、8-6となった。Aqoursがやや優勢だ。結局このように一巡するまで、μ’sは、というか希は絵里との作戦は使わなかった。
そしてローテーションは戻って最初のローテーションだ。
果南のサーブからだ。

果南(このサーブ…さっきはあのツインテールを狙ったけど簡単にとられた…じゃあやっぱり…)

果南「そこだ!」バチ-ン!

絵里「やっぱり私を狙ってくるのね…」

絵里「くっ…」バチッ

絵里「にこ、頼むわ!」

絵里が弾いたボールはにこの方へと行く。

にこ「ったく、しょうがないわねぇ…っと」パスッ

そしてにこはそれを難なくトスを上げる。ここで打つのは…希だ! ここまでトスばかりに専念してきた希だが、実はスパイクもなかなか強い。希が打った球はかろうじて梨子がレシーブする。少し乱れながらもボールは曜のところへ。

曜「ダイヤさん!」パスッ

そしてすでに跳んでいるダイヤの手元にボールをセットアップする。そう、Aクイックだ。

真姫「いける…!」

ダイヤが打ったAクイックは真姫の手にあたり後方へと大きく飛んでいく。

ダイヤ(よし! これは誰も…)

これは届かない…そう誰もが思ったそのときだった。

ダイヤ(…え?)

凛「まかせるにゃ!」ダッ!

ダイヤ(どうして『そこ』にいるんですの!?)

凛が驚異のスピードでボールを追いかける。
凛は部内ではダントツで運動神経がよい。そしてさらにそのレシーブ力もあり、リベロとしては相当な能力を持った選手だ。

凛「追いついた…にゃ!」ポ-ン

希「ナイスや凛ちゃん!」

希(さて…準備はええ? 絵里ち!)

希「絵里ち!」パスッ

絵里「ナイストスよ、希!」

ダイヤ「まずい、バックアタックですわ!」

果南「いままで使ってこなかったのに…」

絵里「いっ…けぇ!」バシン!

ノーマークでの絵里のバックアタック、しかも低いトスであったのでブロックはおろか、レシーブも反応に遅れてしまった。
絵里のボールはそのまま弧を描くようにAqoursのコートで跳ねる。これで8-7、勝負はまだまだ分からない。

21: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:19:41.76 ID:DW5FPWJj
試合は進んで16-16、同点だ。
一瞬でも気を抜いた方が負ける…それほどコート内は緊張感があった。
そして次のサーバーはダイヤだった。

ダイヤ(このサーブ…なんとしても入れて、リードを広げなければ…!)

μ’s側の後衛は凛、希、絵里だ。ここの狙い目はもちろん希だ。なぜなら、セッターだから。
それは簡単な話で、セッターが1回目にさわればもちろん2回目は他の、セッター以外の人が触らなければならない。つまり、セッターがトスできないのだ。
そういうわけで、ダイヤは希に狙いをつける。

ダイヤ(いきますわよ…)

ダイヤ「はあ!」バシン!

ダイヤの打ったサーブは無回転サーブ、つまりブレ球だ。ボールは揺れながら希のもとへ。

希(やっぱりきたか…でも!)

凛「任せるにゃ!」

希の方へ寄っていた凛がすかさずそのボールを横からレシーブする。

ダイヤ「…やはりそうきますか」

凛がレシーブしたボールはすでにコートの中心に上がっていた希の頭上へと行く。

希「ナイス凛ちゃん!」

希(前衛には穂乃果ちゃん、海未ちゃん、にこっち…一番欲しそうなのは…!)

希「にこっち、なかなか求めてくるなあ!」パスッ

希がしたトス、そしてにこが要求したトスは、レフト速攻だった。いわゆる平行トスだ。
普通のレフトへのトスは少なからず放物線を描くのに対し、平行トスは言わば直線でスパイカーのもとにボールが届けられる。
もちろん練習はかなり必要だが、成功すれば相手の反応もかなり遅れ、得点のチャンスとなるトスだ。

にこ(ドンピシャ…!)

にこ「いけえ!」バシン!

善子(くっ、ブロックなんとか追いついて…!)

願いが届いたのか、善子の出した手の指先にボールはあたり、ボールはAqours側のコートの真ん中に落ちてゆく。

果南「オーケー!」パシンッ

そこに入っていた果南がレシーブする。

曜「ナイス善子ちゃん、果南ちゃん!」

曜(ここはやっぱり…)

曜「千歌ちゃん!」パスッ

千歌「もらったぁー!」バシン!

穂乃果「止める…!」バチン!

そしてボールはAqoursのコートへ落ちた…と思いきやそこには善子が滑り込んでいた!

22: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:20:54.17 ID:DW5FPWJj
梨子「ナイス、よっちゃん!」

善子「これくらい当然!」

善子はそう言いながら立ち上がる。
善子はいつも運が悪い。晴れの日に歩けばバナナの皮を踏んで滑り、雨の日に歩けば水溜りで滑ってころんでしまう。
しかし、そんな彼女にもただひとつだけ、運が良かったことがある。それが、この学校のバレー部に入ったということだった。
善子は改めて思う。こんな、中二病な自分を優しく受け入れてくれたバレー部は、本当に素敵なところだと。
たしかに練習は厳しい。しかしその分、楽しいこともあった。
そして善子は呼ぶ。

善子「よし、来ーい!」

曜「行くよ、ヨハネ!」パスッ

善子「…!」

善子「うおりゃあー!」バシン!

そのスパイクはμ’sの二枚ブロックを破ってコートで跳ねる。
17-16、Aqoursの得点だ。

23: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:22:10.02 ID:DW5FPWJj
それからも試合は繰り広げられていき、再び24-23――しかし今度はAqoursのマッチポイントとなった。

千歌「ここで決めれば1セットとれる…!」

サーバーは千歌。この高海千歌、サーブはあまり得意ではなかった。
理由は簡単で、面白くないと思っていたからだ。
サーブを打てば必ず相手のボールになる、そう考えると面白くなかった。
しかし、あるとき梨子が教えてくれたのだ。サーブは最大の攻撃だと。なぜなら、サーブは絶対に自分が打てるからだ。
サーブほどの自分が点を取るチャンスはなかなかない――梨子がそう言って教えてくれた日から、千歌はサーブの練習をとても一生懸命するようになった。
そして、今ではサーブは彼女の一つの武器となっている。
千歌はボールを高く投げる。

海未「これは…! 気をつけてください、ジャンプサーブです!」

そして…打つ!
打ったボールは弧を描いて穂乃果のところへ。

24: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:22:56.52 ID:DW5FPWJj
穂乃果「…来た!」

穂乃果もまた、レシーブは嫌いだった。レシーブよりもスパイクの方が好きだった。ただ単純に、かっこいいから。
しかしことりに言われたのだ。レシーブがあってはじめてスパイクが打てるんだよ、と。
ことりはセッターで、レシーブはかなりうまいのだが、セットアップが希の方がうまいため、希にレギュラーを譲っている状態だ。そんなことりが穂乃果に言ったことだ、無下にはできなかった。
しかし考えてみると確かにそうだ。レシーブがあって、そこではじめてスパイクが打てるのだ。穂乃果はそのとき、レシーブのありがたみを初めて感じた。
その日から、穂乃果はレシーブ練習もまじめにするようになったのだ。
そしてその技術は、ジャンプサーブにも対応できるくらい…上達した!

穂乃果(くっ…でもやっぱり重いや…)バチン!

穂乃果「希ちゃん、お願い!」

希「うん、任せとき!」

希「絵里ち、頼んだで!」パスッ

絵里「オーケー、頼まれたわ!」バシ-ン!

鞠莉「いける!」バスッ

曜「ナイス鞠莉ちゃん!」

曜「いくよ…善子ちゃん!」パス

善子「だからー…ヨハネよ!」バシッ!

凛「いけるにゃ!」バスッ

希「ナイス凛ちゃん!」

希「絵里ち、もう一回!」パスッ

絵里「いくわよー…それ!」チョンッ

梨子「…え?」

絵里が思い切り打つと踏んでいたAqoursは、そのフェイントには対応できなかった。
ボールはあまり音を立てず床に落ちる。
これで24-24、再びデュースとなった。

千歌「あー、フェイントなんてずるいよー!」

絵里「あら? バレーは相手のコートにボールを落とせばなんでもいいのよ」

25: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:23:50.08 ID:DW5FPWJj
そして次のサーブはにこ…に代わってことりだった。ここでことりを出すということはすなわち、ツーセッターを意味する。つまり、希が前衛にいるときはことりがセッター、逆にことりが前衛にいるときは希がセッターをするのだ。
そして笛がなる。
ことりがサーブを打つと、鞠莉が受け、曜に繋いだ。

曜(ナイスだよ、鞠莉ちゃん!)

曜(さてと…ここは誰で行こうかな…)

曜(…よし、頼んだよ…)

曜「果南ちゃん!」パスッ

果南「任せと…け!」バシン!

凛「うっ、重たいにゃっ…」バシッ

ことり「大丈夫だよ、凛ちゃん」

ことり(海未ちゃん…分かってるよね)チラ

海未(ええ、大丈夫です)チラ

ことりはボールを置く――背後に。
そしてそこにジャストで飛んでいた海未が……ボールを強く叩く!
これはAクイック、Bクイックに並んでCクイックと呼ばれる。Aクイックの背後バージョンだ。
これをこの二人は、何度も何度も繰り返し練習してきた。
それもこれも、全ては穂乃果に負けないように。
幼馴染の穂乃果がここまでやってるんだ、自分たちも何か一つ、穂乃果に負けないものをと思い、Cクイックを練習するようになった。
そして今…その努力が花開いたのだ!
ボールはそのままAqours側の床を叩き、得点が入った。これで24-25、またまたμ’sのアドバンテージだ。

ことり「やったね、海未ちゃん!」

海未「ええ、やりました!」

果南「くっ、やられた…まさかCクイックも持ってるなんて…」

27: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:26:13.69 ID:DW5FPWJj
再びサーブはことりだ。

ことり(これで取れば私たちの勝ち…大丈夫…落ち着いて…自分を信じて…みんなを信じて…!)

ことりがサーブを打つ。
受けたのは再び鞠莉。
ボールきれいに曜のところへと落ちていく。

曜(やっぱりこういうときは…)

曜「千歌ちゃん!」

曜が選んだのは千歌のバックアタックだった。

千歌「ったああああ!」バシ-ン!

千歌のバックアタックは鋭いドライブ回転と共にμ’sコート内へと落ちていく。間一髪、それを拾ったのは穂乃果だった。

穂乃果「ことりちゃん、お願い!」

ことり「ナイスだよ、穂乃果ちゃん!」

ことり(こういうときはやっぱり…)

ことり「絵里ちゃん!」パスッ

絵里「オーケー…それ!」バシン!

絵里の強烈なスパイクは千歌のもとへ。

千歌「うぁ、ごめん、弾いた!」バチッ

曜「大丈夫だ…よ!」ポ-ン

曜(果南ちゃん…いけるよね?)

果南(二人が繋いだこのボール…絶対に落とすわけにはいかない…!)

果南「っらぁ!」バシン!

凛(っ、重い…!)

凛「上がったー!」

28: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:26:56.94 ID:DW5FPWJj
ことり「さすが凛ちゃん…!」

ことり(でも…少し遠い…!)

ことり「誰かお願い!」バシンッ

穂乃果「返すよ!」ポ-ン

曜「チャンスだよ! こっち!」

鞠莉「オーケー、曜!」パスッ

曜(もう後がない…ここで取られたら終わりだ…だったら!)

曜「果南ちゃん、もう一回!」

果南「いくよ…!」

果南「絶対に…決める!」バシッ!

果南は思い切り振り抜く。そのボールは二枚のブロックを抜いてコートへ…落ちた!
ここで25-25、再びデュースとなった。

果南「はぁ…はぁ……よし!」

千歌「よーし、このまま一気に行くよ!」

29: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:27:52.57 ID:DW5FPWJj
そして次のサーバーは梨子。

梨子(大丈夫…落ち着いて…)

梨子「えい!」バシッ!

梨子の打ったサーブはまっすぐ進んで穂乃果のところへ。

穂乃果「よし、ことりちゃん!」パシッ

ことり「希ちゃん!」パスッ

希「任せて!」バチンッ

希の打ったボールは千歌のもとへと打ち込まれる。

千歌「くっ、ごめん、乱れた!」バチッ

曜「大丈夫だ…よっ、と!」パスッ

果南「お…っらぁ!」バシン!

果南の強烈なスパイクは凛のもとへ。

凛「にゃ…あ!」バシッ!

ことり「ナイス、凛ちゃん!」

ことり(前衛は絵里ちゃん、海未ちゃん、希ちゃんの3枚ある…ここは…)

ことり「海未ちゃん、Cだよ!」パスッ

海未「分かってます!」バシン!

しかし、やはり2回も同じ手を食うわけにはいかない。そこはしっかりと善子がマークしていた。

善子「甘いわ!」バシン!

ドシャットがきまり、そのままボールはμ’s側のコートの床につく。
これで26-25、Aqoursのアドバンテージだ。

30: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:28:48.17 ID:DW5FPWJj
そしてサーバーは梨子にかわって…ピンチサーバー・ルビィ!

ルビィ(大丈夫…信じて…今までの練習を…!)

この黒澤ルビィ、センターを務める黒澤ダイヤの妹である。彼女がバレーを始めたきっかけはもちろん、姉の影響である。
いつも姉の背中を追ってきたルビィだったが、ついにこの大舞台に立てたのだ。背中を追うだけでなく、並んで共に歩きたいという想いがあった。
だからこそ、このサーブ、簡単に終わらせられるものではない。
ルビィは一旦目を閉じる。
…大丈夫、いける。
そう自分の中で唱えると、不思議とお姉ちゃんが背中を押してくれているような、落ち着いた気分になった。

ルビィ(お姉ちゃん…見ててね…!)

ルビィはボールをすこし高めにあげる。しかしこれは果南や絵里のようなジャンプサーブのトスではなかった。
ルビィは助走をつけ、線のギリギリのところでジャンプし…打つ!
そう、ジャンプフローターサーブだ!
そしてそのボールは激しく揺れながら凛の真正面へと向かう。

凛(このボール…かよちんと同じくらい取りにくいにゃ…!)

凛「くっ…ことりちゃん、ごめん!」バシッ

ことり「任せて!」

ことり(うう、だめだ、誰にあげるかなんて考えてられないよ…!)

ことり「レフト、お願い!」ポ-ン

そしてレフトには…

絵里「オーケー…お願いされたわ!」バシッ!

絵里がいた。そのままボールはルビィのところに飛んで行く。

ルビィ「ピギッ…す、すみません!」バチッ

曜「大丈夫だよ、ルビィちゃん」

曜(やっぱり最後は…)

曜「千歌ちゃん!」

ここで曜が選んだのは千歌のバックアタックだった。

千歌「いっけええ!」バシッ!

海未「しまった…! 間に合うでしょうか…!」

海未はセンターで跳ぶが、ボールには届かない。
そしてそのままボールは落ちて行き…Aqoursの得点になった。
27-25で、2セット目はAqoursがとったのであった。

31: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:29:29.52 ID:DW5FPWJj
μ’s陣営

穂乃果「はぁ…はぁ…やっぱり強いね、Aqours…」

海未「そうですね…簡単には勝たせてくれそうにないです」

ことり「次も全力でやらなきゃね!」

凛「凛に任せるにゃ!」

花陽「凛ちゃん、そのいきだよ」

真姫「こら、あまり調子に乗らないの」

にこ「あんたたち…絶対勝つわよ!」

希「泣いても笑っても次が最後やん?」

絵里「後悔のないよう、精一杯いきましょう!」

穂乃果「じゃあみんな、第3セットも…ファイトだよ!」

32: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:30:00.86 ID:DW5FPWJj
Aqours陣営

千歌「やったね! これで試合は分からなくなってきたよ!」

曜「みんな、ナイスプレーだよ!」

梨子「気を抜かないようにね」

花丸「このまま優勝まで突っ走るずら!」

ルビィ「大丈夫だよ、ルビィたちなら!」

善子「くっふっふ…ついに我が闇の力を解放する時が…!」

ダイヤ「さあ! 勝負はここからですわよ!」

果南「上等だよ、全力でぶつかってやる!」

鞠莉「これが最後…絶対勝とうね!」

千歌「じゃあ3セット目、いっくよー!」

33: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:30:49.61 ID:DW5FPWJj
第3セットはμ’sのサーブからだ。
μ’sはことりを下げて再びにこが、Aqoursもルビィに代わって再び梨子が入っていた。
サーバーは絵里。
笛が鳴ると、絵里はボールを高く上げ…打った!
変わらず強烈なジャンプサーブだ。
受けるのは…鞠莉!

鞠莉(やっぱり強いね…でも!)

鞠莉(果南のよりは全然取りやすい!)バシッ!

鞠莉「上がった!」

鞠莉は絵里のジャンプサーブをきっちりと上げる。

曜「ナイス鞠莉ちゃん!」

曜(まずはこうだよね…)

曜「千歌ちゃん!」パスッ

まずは景気付けに一本、千歌に決めてもらおうというわけだ。

千歌「オッケー、曜ちゃん!」バシッ!

ブロックは2枚、真姫と希だ。

真姫「触れる…!」バチッ

真姫の手に当たったボールはそのまま後ろに行きにこのところへ。

にこ「おっけー!」バスッ

勢いのなくなったボールを、にこは軽く希にパスする。

希「じゃあこっちも景気付けに…穂乃果ちゃん!」パスッ

希は高くレフトに上げる。

穂乃果「ナイストス、希ちゃん!」バシッ!

ブロックは曜の一枚のみ、残りはレシーブだ。
穂乃果のスパイクはブロックを超えてコート内へ。

34: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:31:32.90 ID:DW5FPWJj
鞠莉「とったあ!」

しかしボールの落下点には鞠莉がいた。
そしてボールは…ネットの真上に落ちる!
そしてそこで跳んだのは…真姫とダイヤだ!

真姫(この勝負…)

ダイヤ(負けるわけにはいきませんわ…!)

2人は同時に跳び、ボールを相手のコートに押し込む。
そしてその戦いを制したのは…ダイヤだった。
ボールはμ’s側のコートに落ち、1-0となる。
Aqoursにとっては良いスタートだった。

35: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:32:10.00 ID:DW5FPWJj
そこから試合は進み、11-9。
試合はここまで、μ’sがAqoursに食いついていくような形になっている。
そして次のサーバーは…Aqoursの千歌!

千歌(いくよ…千歌…)

千歌は大きくボールを放り投げる。

海未「気をつけてください、ジャンプサーブです!」

そして踏み込み…打つ!

千歌「てやああああ!」バシ-ン!

打ったボールはネットを超えると鋭く落ちる。が、少し前の方で構えていた凛はそれに反応できた。

凛「頼んだよ、希ちゃん」バシッ

希「頼まれたよ、凛ちゃん!」

希(このままやだめや…さらに点差をつけられてしまう…よし、ここは!)

希「穂乃果ちゃん!」パスッ

穂乃果「次こそ決めるよ! そりゃぁ!」バシ-ン!

穂乃果のスパイクはブロックを超え、そして…今回はボールは床を叩く!
これで11-10。一点差まで詰め寄った。

36: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:33:09.08 ID:DW5FPWJj
しかしその後はμ’sはなかなかAqoursに追いつけず、気づけば23-22、Aqoursはあと一点でマッチポイントだった。
そしてμ’sのサーブ、サーバーは海未に代わって花陽だ!
花陽はいつものサーブポジションに立ち、精神を統一させる。
大丈夫、あんなに練習してきたんだもの…私ならできる!
そうして覚悟を決めて打とうとした瞬間、花陽はある感覚に見舞われた。何かトンネルのようなものが見えるのだ。トンネルというか、それはまるで、ボールの軌道ようだった。その軌道は花陽の手元から延び、ちょうど相手のいない地点へと繋がっている。
花陽は直感的に分かった。私はこの軌道に合わせて打てばいいだけなんだ。
そして花陽はボールを打つ。ボールは描かれた軌道に沿っていき…そのまま床についた。
会場が一瞬静かになる。そして一気に湧いた。
なんとここにきてノータッチエースを決めたのだ。

凛「すごいよかよちん!」

今はコートの外に出ている凛も自分のことのように喜ぶ。

穂乃果「花陽ちゃん、今の狙ったの?」

花陽「えっと…なんだかトンネルみたいなのが見えて…それに沿って打ったら点が入ったというか…」

穂乃果「トンネル?」

真姫「よく分からないけど…とにかくナイスよ、花陽!」

ダイヤ「今のは仕方ありませんわ…さあ、次取りますわよ!」

23-23、次を取った方がマッチポイントだ。しかし次もサーバーは花陽、Aqoursには厳しい状況だ。

37: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:34:00.71 ID:DW5FPWJj
花陽は再びサーブの構えになる。
しかし、今度はあのトンネルは見えなかった。
だがもうそんなのはどうでもよい。今はこの一球を相手のコートに落とすことだけを考えよう、そう思った。

花陽(狙い目はやっぱり…)

花陽(そこだ!)

花陽「いけっ!」バシッ!

花陽のボールは激しくぶれながら…千歌のところへ!
どうしても鞠莉には取らせたくなかったため、鞠莉とは反対側にいる千歌を狙ったのだ。

千歌「大丈夫…なんとか上に…!?」

千歌はここまでのブレ球は取ったことがなかった。梨子は第1セットのときはなんとか上げたが、それも実は花陽のフルパワーではなかった。言うなれば、まだ本気を出していなかったのだ。
しかし今回、花陽はもう100パーセントの力を出していた。というか、出すことができていた。それは絶対に勝つという信念からだろうか、第3セットのピンチの時だからというからだろうか、
なんにしても、今回の花陽のサーブは激しいブレを伴っていた。

千歌「くぅっ、ごめん!」バチッ

千歌の弾いたボールは大きく後ろへと飛んでいき…誰も追いつけなかった。
23-24、ついに土壇場でμ’sが勝ち越したのである。

凛「やったよかよちん! 二連続サービスエース!」

穂乃果「すごいよ花陽ちゃん!」

花陽「えへへ…」

しかし照れているときではない。花陽は再びサーブポジションにつく。

38: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:35:33.49 ID:DW5FPWJj
あと一点入れば優勝…そんなプレッシャーのようなものを感じながら、花陽は狙いを定める。
しかしそのプレッシャーは花陽には少し重すぎたのかもしれない、花陽の打ったサーブは、先ほどより甘く入ってしまった。

千歌「やっぱりきた…けど、さっきよりぶれは弱い…これなら!」

千歌にも、やはり負けられないという思いがあった。それは大好きな先輩たちへの想いだった。
先輩たちはこの試合が終われば勝手も負けても引退だ。ならばせめて、『優勝』という大きな栄誉を手に入れたかった。
もちろんそれは千歌だけではなかった。梨子や曜、善子にルビィに花丸、それに三年生だって同じ気持ちだった。
そして…

千歌「ぐっ、上がったー!」

ボールは上がる。そしてそのボールは曜のところへ。

曜(ナイスだよ、千歌ちゃん…!)

曜「決めてきてね…果南ちゃん!」パスッ

果南「言われなくても…分かってるよ!」バシッ!

果南のスパイクはそのままブロックを抜けて床を叩く。
これでなんとか24-24、デュースに持ち込んだ。

39: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:36:43.12 ID:DW5FPWJj
千歌「ナイスキー、果南ちゃん!」

果南「千歌もよく上げたね」

千歌「えへへ」

花陽「うぅ…ごめんなさい…」

そして次のサーバーはAqoursの果南だ。
果南はボールを受け取るとラインのかなり後ろの方へと下がる。

果南(この一球…絶対に決める!)

しかしここでμ’sの後衛を見てみると、果南から見て左から凛、にこ、穂乃果と、まるで隙がないフォーメーションだった。

果南(なら…!)

果南はボールを高く、しかし少し手前に投げる。そして…打つ!
ボールはやや斜め上に行ったと思いきや、ネットを超えた途端に鋭く落ちる。
そう、果南はこのジャンプサーブで前衛の真姫を狙ったのだ。真姫は構えてはいるものの、あまりレシーブは上手くない。
しかし、だからと言ってこれをミスするわけにはいかなかった。
真姫はよくにこが言っていたことを思い出す。

にこ『いい? レシーブするときには足を肩幅より少し大きく開いてなるべく腰を低くするの。そして強いスパイクやサーブのときほど力を抜くの。いい? これがポイントなんだから』

これは真姫が入部したてのころににこが教えてくれたことだ。

真姫(足を肩幅より少し大きく…腰は低く…そして力を抜く…!)

真姫「ぐっ、お願い!」バシッ

希「ナイスや、真姫ちゃん!」

希(ここはこれしかない…)

希「頼んだで、絵里ち!」

絵里「ええ、任せて…!」

40: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:38:40.78 ID:DW5FPWJj
絵里はスパイクの瞬間、これまでのことを思い出した。
絵里はμ’sの中で一番最後に入ったメンバーだった。
彼女はもともとバレーを習っていて、小学校や中学校に通っていた頃は東京都の代表選手に選ばれるほどだった。
しかし、高校に入ると彼女はバレーは辞めてしまった。勉強に生徒会の仕事に、忙しい事が増えたからというのもあるが、一種の限界を感じていたのだ。
このまま続けてもやはり自分より上手い人はたくさんいて、その人たちにはどうせ敵わないと。
しかし、三年生になったある日、高坂穂乃果に出会う。

穂乃果『絵里先輩、バレー部に入ってください!』

出会って最初の言葉がそれだった。
最初は断っていたのだが、何回も何回もやってくるので仕方なく見学だけということで見に行ったのだ。そしてそこで目にしたのだ、高坂穂乃果のジャンプを。
彼女のジャンプはまるで羽根が生えたようなジャンプで、跳んでいるというより『飛んでいる』と言った方が正しいような、そんなジャンプだった。
それを見た瞬間、絵里は悔しくて、腹が立った。そう、自分に腹が立ったのだ。今まで何もしてこなかったことをとても後悔した。そして、決意したのだ。穂乃果に追いつけるよう、今から始めよう、と。

絵里(そしてこの試合…勝っても負けても最後の試合…だったら…私は勝ちたい!)

絵里「えぇい!」バシン!

絵里のスパイクは千歌とダイヤの二枚ブロックを抜けてストレートへ。
そしてそこに構えていたのは…梨子だ!

梨子(私はずっと千歌ちゃんを追いかけるだけだった…けど!)

梨子(もう追いかけるだけなんて嫌…一緒に隣を歩きたい!)

梨子「っ、お願い、曜ちゃん!」パシッ

梨子は絵里のスパイクを上げると、曜にボールを繋ぐ。

絵里「くっ…」

41: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:39:30.45 ID:DW5FPWJj
曜(ダイヤちゃんと千歌ちゃん…ここは!)

曜「ダイヤちゃん!」

曜はダイヤに少し高めのセンタートスを上げた。

ダイヤ「ナイスです、曜さん!」

ダイヤが跳ぶ。そして思いを込めたスパイクを放つ。
思えば、ダイヤがバレーを始めたのは果南と鞠莉がやっていたからだった。
果南は特に県内でもトップクラスの選手で、そのスパイクの強さは有名だった。
鞠莉もレシーブに関しては県内でも有名レベルだった。
そんな二人とはダイヤはもとから友達で、二人と同じ事がしたいからということでバレーを始めたのだ。
そして今ではこんな大舞台に立てているなんて…
ダイヤもまた、友のため、そして自分のためにも、絶対に負けられなかった。

ダイヤ「いっけぇ!」バシン!

しかしダイヤのスパイクは希のブロックに少しあたり、後方へ。
それをにこがきっちりと希にリターンする。

希「もう一回、頼んだで! 絵里ち!」

絵里「…!」

三年生で繋いだこのボール、決めないわけにはいかなかった。

絵里は跳ぶ――飛ぶ。

ブロックは二枚、曜とダイヤだ。しかし、そんなのはどうだっていい。
絵里は道を開く。ブロックのその向こう側へと。

絵里「たあぁー!」バシン!

絵里のスパイクはブロックを…抜けた! そしてそのままボールはAqours側の床に落ちる。
これでまたμ’sにアドバンテージだ。

絵里「やったわ!」

希「ナイスやん、絵里ち!」

一方Aqoursは本当に後がなくなった。
ここでもう一点取られれば即終了、敗北となる。

ダイヤ「絶対に気を抜けませんわ…!」

果南「ここで負けるわけにはいかない…!」

鞠莉「取ってみせる…!」

三年生の闘志がたぎる。

42: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:40:42.25 ID:DW5FPWJj
そしてサーブ権はμ’sへ、サーバーは…絵里だ!

絵里(このサーブ…ものにしてみせる!)

絵里は先程の果南と同じくらいに後ろに下がる。そして笛が鳴ると同時にボールを高く投げた。そして…打つ!
ボールは前衛にいる千歌を目がけて急降下する。
そう、果南に、負けないわよ、と言わんばかりに同じようなサーブを打ったのだ。しかも、かなりの精度で。

千歌「っ、ごめん、カバー!」バチッ

千歌はこれを完全に受けきることができなかった、が、かろうじてボールは上がった。

鞠莉「オーケー、任せて! 果南、いくよ!」パシッ

果南「オッケー、任された!」バシッ!

果南がバックから打ったボールは凛のもとへ。

凛「任せるにゃ!」パシッ

希「いくよ、真姫ちゃん!」パスッ

ここでAクイックだ。すでに跳んでいた真姫がセットされたボールを叩く。
真姫にもこの試合にかける思いがあった。
三年生…特ににこは、真姫にとって特別な存在だった。
真姫はμ’sの中で唯一、高校から始めた初心者だった。そしてその指導をしてくれたのがにこであった。
にこと真姫は互いに正直でないところがあって、似た者同士でもあった。
意見が衝突して喧嘩になることも多々あったが、それでも真姫は、にこのバレーにかける思いは認めていた。
にこはチーム内で一番背が低いが、バレーへの情熱だけは誰よりも持っていた。そう、あの穂乃果よりもだ。
そんなにこのことを、真姫はひそかに尊敬していたのだ。
三年生の…にこちゃんのために!
そんな思いを込めてスパイクを打つ!
しかしここはダイヤがマークしていた。
ダイヤの手に当たったボール左斜め後ろに行き梨子のもとへ。梨子は丁寧にそれを曜のところへパスする。

43: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:41:33.81 ID:DW5FPWJj
曜「いくよ、千歌ちゃん!」パスッ

千歌「もってこい!」

千歌「いっ…けぇ!」バシッ!

千歌のスパイクはブロックを超えてμ’sのコート内に侵入する。
しかしその落下点には…にこがいた。

にこ「ふん、お見通しよ!」パシッ

希「いいやん、にこっち!」

そして希は思いを馳せる。思い出せばきりがないほどの辛い練習と、それ以上の楽しみがあったことを。
そして最後はやはり…

希「穂乃果ちゃん…頼んだよ!」パスッ

穂乃果「希ちゃん…」

海未「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

凛「穂乃果ちゃん!」

花陽「穂乃果ちゃん!」

真姫「穂乃果!」

にこ「穂乃果!」

絵里「穂乃果!」

穂乃果「みんな…!」

穂乃果「たあああああー!!」ピョ-ン!

穂乃果「いけー!」バシン!

44: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:42:10.34 ID:DW5FPWJj
ドンッ、という音が、一瞬静まり返った会場に響いた。
それはボールが床につく音…つまり、μ’sの勝利を知らせる音だった。

穂乃果「…勝った」

希「うちら…」

凛「勝ったんだ…」

やったー! という声とともに、会場は歓声に包まれた。それはμ’sの優勝を讃える歓声でもあり、Aqoursの健闘を祝う歓声でもあった。

果南「ちぇっ、負けちゃったか」

ダイヤ「こうなってしまったものは、仕方ありませんわね…」

鞠莉「でも、よく頑張ったよ」

三年生は、これで最後の大会が終わったことになる。つまりはもう引退だ。
そしてそれは、μ’sも一緒だった。

穂乃果「あの、千歌ちゃん」

穂乃果が千歌に右手を差し出す。

穂乃果「握手、いいかな」

千歌「穂乃果ちゃん…次は負けないから!」

そう言って千歌は泣きながら、しかし笑顔で手を握る。
そして他のメンバーも…

45: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:42:46.69 ID:DW5FPWJj
真姫「ありがとう」

ダイヤ「ナイスゲームでした」

~~~

にこ「おつかれ様」

梨子「ありがとうございました」

~~~

海未「また会いましょう」

善子「次は負けないんだから!」

~~~

ことり「ありがとう!」

花丸「今回は出番がなかったけど…次は勝つずら!」

~~~

花陽「ありがとうございました」

ルビィ「来年また会いましょう!」

~~~

凛「ナイスプレー!」

鞠莉「そっちもね!」

~~~

希「いいプレーだったよ」

曜「希さんも最高でした!」

~~~

絵里「おつかれ様。楽しかったわね」

果南「そうだね、負けちゃったけど」

46: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:43:26.88 ID:DW5FPWJj
穂乃果「来年…必ずまたここで会おうね!」

千歌「うん! μ’sを倒すのは私たちなんだから、それまで負けちゃだめだよ?」

穂乃果「うん、頑張るよ!」

こうして、第○回全国春高バレー大会は幕を閉じた。μ’sの優勝とともに――!

47: 名無しで叶える物語(茸) 2018/02/06(火) 02:43:50.03 ID:DW5FPWJj
終わりです。見てくださった方々、本当にありがとうございました。

49: 名無しで叶える物語(庭) 2018/02/06(火) 08:26:40.02 ID:gFTCycal
最後はあっさりμ'sに花持たせてて良かった
お疲れ様でした