1: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:17:13.17 ID:PLNQokfT
【十二年前】

絵里(5歳)「スーシー?」

祖母「そう。お寿司よ」

絵里「わあー!заводみたい♪このスシ、ぜんぶたべられるのー?」キャッキャ

祖母「食べきれる分だけね。ほかのお客さんもいるんだから」

絵里「はーい!」

祖母「はい、お茶。熱いから気をつけてね」

絵里「おはし!ほんでみたことある!」

祖母「そうね。これは割り箸」

絵里「ニッポンのオースーシーは、おはしでたべるのー?」

祖母「手で食べられる物もあるけど、お箸を使ったほうが衛生的ね」

絵里「えいせい?」

祖母「手が汚れないでしょ?」

絵里「そっか。エリチカ、おはしでたべる!」

祖母「ふふふ。じゃあ注文しましょうか…エリーチカ、何食べたい?」

絵里「えーと、えーと…креветка!」

2: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:19:28.45 ID:PLNQokfT
【十年前・高坂家】

希(小2)「おいしい♪」モグモグ

穂乃果(小1)「おはし!」

雪穂(4歳)「おはしー?」キャッキャ

希(おだんご食べたあとの“くし”を二本もってあそんでる…)

穂乃果「ほのか、これでごはんたべる!」

ほの母「ちゃんとしたお箸があるでしょ?おだんごの串は危ないからダメ」

穂乃果「えー!おだんご、あぶなくないよー?ね、のぞみちゃん」

希「うん。きぃちゃんちのおだんご、おいしいから大好き♪」

ほの母「ありがと、希ちゃん。でも串はダメよ」

穂乃果「なんでダメなのー?」ブー

雪穂「なんでー?」

ほの母「おだんごの串をお箸として使ってたら、穂乃果のお箸は使われなくなっちゃうでしょ。お箸がかわいそうよ。串はおだんごのためにあるんだから、お箸じゃないの」

穂乃果「そっか」

ガタ カチャ

穂乃果「おはしさん。ごめんね」ナデナデ

希(うーん。さすが、きぃちゃん…お母さんやね)

4: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:23:17.50 ID:PLNQokfT
【八年前・園田家】

穂乃果(小3)「はしひめ?」

ことり(小3)「おはしの、おひめさま?」

海未母「お姫さまとは、ちょっと違いますね。橋姫は女神さま…橋を守る水神さまです」

ことほのうみ「へー」

海未母「ただ…橋姫に関するお話には、いろいろあって。中には、橋姫は人を次々と呪い殺したおそろしい鬼だった…というお話もあるんですよ」

海未(小3)「こ、こわいです…」フルフル

穂乃果「連続さつじん事件っていうんだよね!犯人のわるいオニさんは指名手配だよ!」

海未母「そうですね。ふふふ…」

穂乃果「絶対、犯人をつかまえてね!ことりちゃん!」

ことり「え!?…ことりがつかまえるの?」

穂乃果「うん。だって、オニは昔の人でしょ?」

海未母「ええ。橋姫の伝説は平安時代にはあったといわれています」

穂乃果「わるい人をつかまえるのは、とりものっていうんだよ。おばあちゃんが言ってた!」

海未「とりもの…」

海未母「まあ…でも、遠い昔の話ですから。今となっては証拠もありませんし…きっと悪い噂は作り話で、本当の橋姫は橋を守ってくれる優しい女神さまだったと私は思いますよ」

穂乃果「そっかぁ…」

ことり「うん。そのほうがステキ♪」

海未「そうですね…」

5: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:25:38.75 ID:PLNQokfT
【六年前・小泉家】

ジュワー パチパチ

花陽(小4)「あちち><」

花陽ママ「あらら、普通のお箸使ってたのー?菜箸があるわよ。はい」

花陽「あ、ありがと…」

花陽(お料理に使う、さいばし…でも長くてちょっと使いにくい。お母さんはどうして何でも上手に使えるのかな?)

花陽「ふー。できた♪」

凛(小4)「おいしそう♪」

凛ママ「花陽ちゃんが作ったの?」

花陽「う、うん」

凛「すごいにゃー♪」

ママりんぱな「いただきます♪」

サクッ

花陽ママ「…」ハフハフ

凛「おいしい♪」モグモグ

凛ママ「衣サクサク、中はふわふわ…やるわね」

花陽「えへへ」

【四年前】

真姫ママ「はい。これ、おみやげ♪」

真姫(小6)「ありがと…お箸?」

真姫ママ「バットを作るときに出るアオダモの端材や、折れたバットを回収して作ってるんですって」

真姫「ふーん…巨人ね」

真姫ママ「ええ。高橋(由)選手や橋本(到)選手が活躍してるでしょ?」>>2013

真姫「その橋じゃないけど…」

真姫(バットの材料で作るから“かっとばし”っていうらしい…商品名からダジャレみたいなのね)

6: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:26:58.12 ID:PLNQokfT
【一昨年】

ことり(中3)「ふーんふふんふんふんふんふーん♪」

穂乃果(中3)「それ、何の歌だっけ?」

海未(中3)「確か“ロンドン橋”ですね」

ことり「うん。幼稚園で歌ったよね♪」

穂乃果「あぁーそうだ!懐かしいねー♪」

ことほの「ろーんどんぶりっじずふぉーりんだーん♪」

海未「でも、橋が何度も何度も落ちる歌なんですよね…意味もわからず気楽に歌っていましたが」

ことり「確かにそうだね。小さい頃はロンドン橋って言われてもどこにあるのかよくわからなかったし…」

穂乃果「日本橋や水道橋と違って全然身近じゃないもんね」

海未「ロンドンは知っていても実際に行ったことはありませんからね…」

穂乃果「っていうか、歌詞にマイフェアレディって出てくるから、フォーリンダウンをフォーリンラヴって歌ってなかった?」

ことり「アハハ。そう歌ってる人いたよね…」

海未「橋が貴婦人に恋をするんですか?」

穂乃果「そうそう。恋に落ちちゃったから橋も落ちちゃうの!」

ことり「えぇ…どういうこと?」

穂乃果「ほら、前に海未ちゃんのお母さんが橋の女神さまの話をしてくれたでしょ?」

海未「ああ、橋姫の伝説ですか」

穂乃果「そう、それ。ロンドン橋を渡る“マイフェアレディ”に恋した水神さまが、気づいてほしくて意地悪しちゃうの!」

ことり「橋を守るはずの橋姫が自ら橋を落としてるってこと?」

穂乃果「ものすごく嫉妬深い女神さまっていう説があるから、そういうこともあるかもしれないでしょ?」

海未「橋姫に失礼ですよ。嫉妬やら鬼やらの話は後世の創作です」

ことり「確かに、その辺りの話は女神っていうより人間っぽいもんね」

穂乃果「んー。じゃあ橋姫がマイフェアレディに恋するところまでは本当で、マイフェアレディに夢中になってる間に橋が落ちちゃう話?」

海未「うっかり過ぎますが、意地悪で橋を落とすよりはいいでしょう」

ことり「穂乃果ちゃんみたいな橋姫さまだね♪」

穂乃果「えー!?><」

10: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:29:43.81 ID:PLNQokfT
【ロンドン】

雪穂「ふーんふふんふんふんふんふーん♪」

穂乃果(あの人、素敵だなぁ…この橋をいつも渡ってるけど、近くに住んでるのかな?)

穂乃果(私は橋を守らないといけないんだけど…ああっ、でもあの子が気になるよー!><)

祖母「いらっしゃい雪穂ちゃん♪」

雪穂「こんにちは。これ、おだんごです。母が持って行けって」

祖母「あらあら、いつもありがとうね♪」

亜里沙「穂むらのおだんご大好き♪」モグモグ

祖母「雪穂ちゃんは橋姫って知ってる?」

雪穂「はしひめ?」

祖母「ロンドンには橋を守る女神さまが昔からいるんですって」

雪穂「へー。…でも、ロンドン橋って何度も落ちてるみたいだけど…」

祖母「ふふふ。その女神さまは惚れっぽくてね。好きな女の子ができると、その子のことが気になって、うっかり橋から目を離しちゃうんですって。その間に橋が落ちちゃうの」

雪穂「そ、そうなんだ…じゃあ、ちゃんと橋を守ってくれるようにお願いしなくちゃ」

亜里沙「女神さまにも、おだんご持ってってあげるの?」

雪穂「ううん。橋といえば、やっぱりこれだよ♪」

穂乃果(あっ、あの子が来た…)ドキドキ

亜里沙「ユキホ。それ、なんていうお菓子?」

雪穂「これは生八ツ橋。あんこが入ってるんだよ」

亜里沙「シナモンの香りがするね♪」

穂乃果(一緒にいる女の子は誰だろう…仲が良さそうだよね。もしかして、恋人!?)

絵里「亜里沙!」

亜里沙「あっ、お姉ちゃん!」タタッ

亜里沙「お姉ちゃーん♪」ギュー

絵里「帰りましょ。亜里沙」ナデナデ

亜里沙「うん!じゃあ、またね。ユキホ」

雪穂「ん。また明日」

穂乃果(あっちの金髪のお姉さんのほうが恋人かな?二人で帰っていったし…)

12: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:34:08.21 ID:PLNQokfT
雪穂「こんにちは」

穂乃果「あっ…は、はい。こんにちは」

雪穂「あなた、いつも橋の上にいるけど…もしかして、橋姫?」

穂乃果「えっ。…わ、私を知ってるの!?」

雪穂「やっぱり。亜里沙のおばあちゃんに聞いたんだ。このお菓子、よかったら食べて」

穂乃果「わあ、生八つ橋だぁ…私、これ大好き♪」

雪穂「橋をちゃんと守ってね。また落ちたりしないように…」

穂乃果「う、うん。頑張るよ!…また会いに来てくれる?」

雪穂「まあ、この橋を渡らないと家に帰れないし、学校にも行けないからね…亜里沙の家も橋を渡った向こうにあるし」

穂乃果「えーと…ユキホ、さん?」

雪穂「そうだよ。私は高坂雪穂」

穂乃果「あ、あのっ。ユキホさん!」ギュ

雪穂「わ。…な、なに?」ドキ

穂乃果「私を…ユキホさんのお嫁さんにしてください><」

雪穂「え?…いや、橋の女神さまが人間の私と結婚していいの?」

穂乃果「恋に落ちると橋が落ちちゃうこともあるけど…恋が愛になって強い絆ができれば橋は落ちなくなるよ!」

雪穂「そっか。…いいよ。私のお嫁さんになってくれる?」ギュ

穂乃果「ユキホさん///」

雪穂「雪穂でいいよ。お姉ちゃん!」

【今年七月・高坂家】

雪穂「…と、こうして私たちは一緒に暮らすようになったんだよね」

穂乃果「そっか。それで雪穂と私は苗字が同じなんだ…って違うよ!?私のほうが雪穂より先に生まれてこの家で暮らしてるじゃん!」

雪穂「まあ細かいことは気にしないで。とにかくお姉ちゃんは私のお嫁さんになったの」

穂乃果「いや、雪穂まだ14歳だから結婚できないよね?」

雪穂「お姉ちゃんと結婚したのは昔のロンドンだったから、今の年齢は関係ないよ」

穂乃果「ロンドンに住んでたことなんてないと思うけど…」

雪穂「そんなことないよ。お姉ちゃんの瞳が青いのが何よりの証拠」

穂乃果「え!?…言われてみれば、青い!?」

雪穂「でしょ。お姉ちゃんは橋の女神としてロンドンで生まれ育ったの。青い瞳は水神の証」

穂乃果「知らなかった!?私の瞳にそんな秘密があったなんて…」

15: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:35:55.96 ID:PLNQokfT
トプン ザバー

ほのゆき「ふー」

雪穂「嫉妬深いってほどじゃないと思うけど、お姉ちゃんも嫉妬とかするの?」

穂乃果「んー。亜里沙ちゃんが雪穂と仲良しでうらやましいなーって。学校でもいつも一緒でしょ」

雪穂「そりゃ同じクラスだし。お姉ちゃんとは学年が二つも違うんだからしょうがないじゃん」

穂乃果「まあね。絵里さんは亜里沙ちゃんと三つ違いで一緒に学校に通えないんだから、私は一年だけでも雪穂と同じ中学に居ただけ恵まれてるのかなって思うけどさ」

雪穂(オープンキャンパスのアンケートの結果、ただちに廃校って事態は回避したらしい。私も音ノ木坂に行ける可能性が出てきたんだよね)

穂乃果「雪穂はどうなの?」

雪穂「ん?…何の話?」

穂乃果「嫉妬したりするのかってこと」

雪穂「あー。うん…お姉ちゃんと違ってそんなの昔から日常茶飯事」

穂乃果「えぇ!?そ、そんなに?」

雪穂「だってお姉ちゃん、ことりちゃんや海未ちゃんや希ちゃんと仲いいでしょ。そこに最近は絵里さんや真姫さんたちも加わって…きりがないよ」

穂乃果「仲はいいかもしれないけど別に浮気してるわけじゃないのに…」

雪穂「でも十二人もいたら誰かがお姉ちゃんのこと狙っててもおかしくないしさ」

穂乃果「十二人?」

雪穂「μ'sとミカさんたちと亜里沙」

穂乃果「あ、亜里沙ちゃんはないでしょ?雪穂のほうが仲良しじゃん!」

雪穂「私とは友達ってだけだし。亜里沙はμ'sが大好きなんだよ。お姉ちゃんに対してそういう感情がないとも限らないでしょ」

穂乃果「そんなことないと思うけどなぁ…」

雪穂「お姉ちゃんは?」

穂乃果「なに?」

雪穂「ちゃんと私のこと好き?」

穂乃果「当たり前だよ。…私が先に好きになったんだからね?///」

雪穂「ふふ。それならよろしい♪」ナデナデ

穂乃果「よろしくないよ。雪穂はどうなの?」ギュ

雪穂「好きだよ。お姉ちゃん」チュ

ほのゆき「…///」

16: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:41:56.92 ID:PLNQokfT
穂乃果「…っていうか、橋姫伝説って日本の話だったと思うんだけど」

雪穂「ロンドン橋って言い出したのはお姉ちゃんでしょ?」

穂乃果「何となく怖い橋の伝説っていうのが、日本以上にロンドン橋かなって。だって嫉妬の鬼がどうのこうのって話になると橋はもうほとんど関係ないじゃん」

雪穂「まあそうだね。ただ嫉妬でおかしくなった人の話がなぜか橋の女神の伝説とごっちゃになったって感じがするよ」

穂乃果「海未ちゃんのお母さんも言ってたけど、橋の女神と嫉妬の鬼さんは本来関係ないんじゃないかなぁ…」

雪穂「私は浮気なんてしないからお姉ちゃんが嫉妬する必要もないしね」

穂乃果「心配だから音ノ木坂に来て」ギュ

雪穂「ん。廃校にならなければ行くよ」

穂乃果「約束だからねっ!」

雪穂「はいはい」ナデナデ

穂乃果「雪穂ー♪」ギュー

18: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:44:12.67 ID:PLNQokfT
【八月】

真姫「ロンドン橋といえば…確か昔話があったわね」

穂乃果「橋姫の伝説!?」

真姫「違うわよ。ロンドンの昔話。いや、正確には田舎からロンドン橋まで行って帰ってくる話ね」

穂乃果「音ノ木坂から?」

真姫「そう。千代田区の小さな家で暮らす貧乏な若者の話」

にこ「誰が貧乏な若者よ!」

ここあ「ねえねえ!かぶとむし、いるかなー!?」

こころ「いないと思いますけど…」

ここあ「いないのー?><」

凛「家はボロくて貧乏でも、庭に大きな樫の木があるのが自慢なんだよねー」

こころ「ここあ!何してるんですか!?」

ここあ「木にのぼって、かぶとむしさがすの!」

こころ「千代田区に野生のカブト虫なんていませんよ」

ここあ「じゃあ、くわがたー?」

こころ「クワガタもいません」

ここあ「なーんだ。つまんない…じゃあ、なにがいるのー?」

こころ「それは…何でしょう?」

にこ「じゃあ、どんな生き物がいるか探してみましょ」

ここあ「はーい♪」

穂乃果「にこちゃんは貧乏でも、可愛い妹たちと一緒に幸せに暮らしてるんだね」

真姫「そう。日が暮れるまで妹たちと遊んで、夜はぐっすり眠って…」

にこころあ「…」Zzz

にこママ「にこ…にこ。私の声が聞こえる?」

にこ「ママ…?」

にこママ「私はロンドン橋のマイフェアレディよ」

にこ「はあ」

にこママ「ロンドン橋まで来なさい。きっといいことがあるから…」

19: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:46:27.68 ID:PLNQokfT
にこ「待って、ママ!」ガバッ

にこ「あ、あれっ?…夢?」

こころあ「…」スヤスヤ

真姫「ロンドン橋に呼ばれる不思議な夢を見た若者は考える。どうすればロンドン橋へ行けるだろう…」

凛「びんぼーなのにロンドン旅行は厳しいにゃ」

花陽「どこへ行くにも、お金かかるもんね…」

\タタタターン タララーン♪/

絵里「え?…私たちのパーティーに?」

にこ「どうしてもお金が必要なのよ。ネクロゴンドの洞窟に出る“おどるほうせき”を狩りに行きましょ!」

希「確か、一匹あたり1023ゴールドやな」

にこ「半分!…いや、四分の一でいいから!」

亜里沙「行こうよ。お姉ちゃん!」

絵里「わかったわ。…半分ね?」

にこ「絵里…あ、ありがと」

絵里「お礼は結果を出してから。でしょ?」

にこ「…そーね」

絵里「実は…おおばさみと互角の攻撃力があって私も装備できるガイアのつるぎを手放したくなくて、先に進めなかったの」

希「ゾンビキラーでも買えばいいんやない?」

亜里沙「でも、それだとお金が…」

にこ「それなら、やまたのおろちを倒して“くさなぎのけん”を手に入れればいいじゃない」

絵里「…勝てるかしら?」

希「まあ…ボストロールに勝ったんやし、いけると思うよ」

【ジパングの洞窟】

亜里沙「あ、暑いね。お姉ちゃん…」

絵里「希。マヒャドとか使えない?」

希「まだ覚えてないよ。っていうか、戦う前にMP無駄遣いしたらアカンやん?」

にこ「さっさと行きましょ。さくっと倒して脱出よ!」

穂乃果「くまーっ!」

絵里「ごうけつぐまが出たわ!?」

20: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:48:17.13 ID:PLNQokfT
亜里沙「はい、穂乃果さん。ロシアパン」

穂乃果「わー!ありがとう♪」ベリッ

穂乃果「おいしい♪」モグモグ

希「クマさんになってもパンが好きなんや…」

にこ「今のうちに先へ進むわよ!」

ドタバタ

海未「騒がしいですね…何事です?」

にこ「で、出たわね…やまたのおろち!」

ことり頭「ちゅんちゅん♪」
真姫頭「イミワカンナイ」
凛頭「お仕置きするにゃー!」
花陽頭「た、タスケテ」

希「頭が五つしかないやん?」

海未「フフフ…禁忌に触れてしまいましたね。あなた方を生かして帰すわけにはいきません」

絵里「来るわ!みんな、気をつけて…」

にこ(亜里沙のレベルじゃ、フバーハは使えない…そもそも覚えるレベルなら楽勝だから必要ないし)

にこ「先手必勝よ!」ビシッ

凛「痛いにゃぁ><」

ガォーッ

希「いきなり火炎キター!」

亜里沙「ピオリム…あちち><」

穂乃果「海未ちゃん!」タタタ

絵里「しまった、もう追いついてきたの!?」

希「ボスに援軍なんてあり!?」

ことり「穂乃果ちゃんは下がってて」

穂乃果「でも…海未ちゃん!」

海未「何です?」

穂乃果「穂むらのおまんじゅうを持ってきたよ♪ひと箱!」

海未「はあ。ありがとうございます…」

22: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:55:43.54 ID:PLNQokfT
穂乃果「タダではあげないよ。海未ちゃんも何かちょうだい♪」

海未「では、これと交換ならどうです?“くさなぎのけん”」

のぞえりにこ「!?」

穂乃果「いいよー♪はい、どうぞ」

海未「ありがとうございます」

穂乃果「はい、亜里沙ちゃん。ロシアパンのお礼♪」

亜里沙「Хорошо」

亜里沙「くさなぎのけん…もらっちゃった」

にこ「よし、脱出よ!」

希「リレミト」

絵里「…なんだか、ずいぶんあっさり手に入ったわね…」

希「攻撃力も上がったし、ルカナンの効果もついてお得やな」

亜里沙「じゃあ、次はいよいよネクロゴンドだね♪」

ポイッ ドバババ

絵里「この辺りの敵は強いから、気をつけて行きましょう…」

にこ「洞窟まで行く前にやられないでよ?」

ここあ「がおーっ!ミニデーモンだよ♪」

亜里沙「かわいい…誰!?」

ここあ「あっ、おねえちゃん!」

にこ「ここあ!…何してんの?こんなところで…」

ここあ「えへへ。おねえちゃーん♪」ギュー

にこ「今からネクロゴンドの洞窟へ行くのよ。危ないから、あんたは帰ってなさい」

ここあ「えー!つまんない…」

にこ「船に乗れば、もっといろんなところへ行けるわよ」

ここあ「ほんと!?バステールとうにもいける?」ワクワク

亜里沙「バス停?」

希「カリブ海にあるグアドループ諸島の一つ、バステール島やね」

にこ「あー、ヘラクレスなんとかいうカブト虫がいる島ね。行けるわよ」

ここあ「じゃあ行く♪」

23: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 18:58:37.56 ID:PLNQokfT
にこ「小泉先生、星空先生。ここあをお願いします」ペコ

凛ママ「船の旅かぁ。私もちょっとワクワクするにゃ♪」

ここあ「わーい!こいずみせんせー♪」キャッキャ

花陽ママ「うふふ。じゃあ行きましょうかー♪」

こころ「お姉さまも、どうかお気をつけて…」

にこ「大丈夫よ。すぐ帰るわ」ナデナデ

真姫「バステール島まで行けるんだったらロンドンのほうが安上がりなんじゃ…」

凛「それは言わない約束にゃ」

【ネクロゴンドの洞窟】

にこ「おどるほうせきはどこ!?一攫千金!」ギラギラ

骨「」カタカタ

絵里「“じごくのきし”が出たわ!」

にこ「邪魔!」バキッ

ガシャ

にこ「骨なんかに用はないわよ!おどるほうせき!出てきなさい!」

希「もうちょっと奥へ進んでみようか?」

絵里「いや、ちょっと待って」

希「どうしたん?」

絵里「この先に進むと、ザラキを使うホロゴーストが出るようになるのよ。この階なら出現モンスターはおどるほうせきを含む5種類だけ」

にこ「でも、それだと宝箱を回収できないじゃない」

希「宝箱のあるフロアには…おどるほうせきは出ないみたいや」

絵里「強力な装備は欲しいけど、今回の目的はあくまでお金だから…ここで粘りましょう!」

ウロウロ

にこ「おどるほうせき、出てきなさい!」

24: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:00:16.82 ID:PLNQokfT
絵里「フロストギズモが出たわ!」

希「ベギラマ!」

亜里沙「いかずちの杖!」

ゴーッ

希「ライオンヘッドが出たよ!」

にこ「お呼びじゃないわよ!」ドカッ

絵里「はっ!」ズバー

亜里沙「えーい!」ポコン

ガシャガシャ

絵里「また“じごくのきし”よ!」

にこ「しつこい!」ゲシッ

バラバラ

亜里沙「キアリク!ベホイミ!」キラキラ

希「もうMPが無くなりそうや…」

にこ「全然おどるほうせきが出ないじゃない!」

絵里「一度脱出して、回復してから出直しましょ」

\タタタターン タララーン♪/

絵里「だいぶレベルが上がったわ。控えのメンバーと入れ替えて育てようかしら?」

にこ「めんどくさいわね…あと誰がいるのよ?」

絵里「武闘家の凛に、魔法使いの花陽。あと元魔法使いで今は戦士の穂乃果」

にこ「ん?…穂乃果?」

【アリアハン】

にこ「穂乃果!あんた、ロンドン橋へ行ったことがあるんじゃないの!?」

穂乃果「まあ、あるけど。私あっちに住んでたし…」

にこ「それならそうと先に言いなさいよ!」

穂乃果「ルーラ!」

ビューン

25: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:02:46.42 ID:PLNQokfT
【ロンドン橋】

にこ「ついに来たわよ!(文字通り)夢に見たロンドン橋!」

にこ「ふーんふふんふんふんふんふーん♪」スタスタ

にこ「ふんふん…なんか、いい匂いがするわね」クンクン

グー

にこ「おなかすいた…」

雪穂「いらっしゃいませ!穂むらロンドン橋支店へようこそ♪」

にこ「こんな橋の上で商売していいもんなの?」

雪穂「んー。まあ昔からやってるし…」

にこ(旅費には全然足りなかったけど、ジパング~ネクロゴンドで結構稼いだわ)

穂乃果「お代はいいよ。うちのお店だし。今日は私のおごり♪」

にこ「あ、そう。ありがと…」

にこ「つーか、あんたたちいつからロンドンにいるのよ?」モグモグ

穂乃果「えへへ。まだロンドン橋がよく落ちてた頃、ここで雪穂にプロポーズしたの♪」

にこ「それって何百年前よ…っていうか、あんたたち姉妹…」

雪穂「当時の私たちはまだ姉妹じゃなかったのでセーフです!」

穂乃果「うん。私は橋を守る女神だったし」

にこ「そんなのあり?」

真姫「こうして、はるばるロンドンまでやって来た貧乏な若者は、しばらく橋の上を行ったり来たりしてみたけど…」

にこ「何も起こらないわね…もう足疲れた」フラフラ

穂乃果「っていうか、にこちゃん…そもそも何しに来たの?」

にこ「…夢よ」

雪穂「ゆめ?」

にこ「そ。夢で見たのよ。来たこともないはずのロンドン橋…ここに来ればいいことがあるって言われたの」

ほのゆき「へー」

雪穂「確かに不思議な夢だけど、夢は夢でしょ?」

穂乃果「そういえば…私も変な夢をみたんだ」

雪穂「どんな夢?」

27: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:05:34.97 ID:PLNQokfT
穂乃果「千代田区にボロい家があって、庭に大きな木が生えてるの。小さい女の子が木に登って、カブト虫探すんだーって」

にこ「それって…私の家!?」

穂乃果「でも、矢澤先生が出てきて言ったの。大きな樫の木の根元に、宝物が埋まってるって…」

にこ「!」

真姫「橋の女神もまた、若者の母親が夢に出てきて、お告げを聞いたという」

にこ「穂乃果!帰るわよ!千代田区へ!」

穂乃果「あ、うん。ルーラ!」

ビューン

【矢澤家】

にこ「本当に、庭の木の根元に宝物が…?」ゴクリ

絵里「にこ。帰ってたのね…ロンドンはどうだった?」

にこ「絵里。ちょっと、その剣貸して!」

絵里「え!?」

ザッ ガシャ

真姫「大きな樫の木の根元を掘ってみると…」

「いたっ><」

えりにこ「!?」

絵里「に、にこ?…どこかケガでもした?」

にこ「私じゃないわよ。今の声は…まさか」

ガサガサッ

絵里「ひっ…人が埋まってる!?殺人事件!?」

「いきてるよー!><」
「あ、暑いです…」

にこ「やっぱり…こころ、ここあ!あんたたち、なんで庭に埋まってるのよ!?」

絵里「よく生きてたわね…大丈夫?」

ここあ「うん。げんき!」

こころ「グアドループ諸島まで行ったんですけど、ここあが“お姉ちゃんに会いたい”と言い出して…」

ここあ「こころだって、ゆってたじゃん!」

28: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:07:03.62 ID:PLNQokfT
こころ「ですから、地中を掘り進んで日本へ帰ってきたんですけど…」

にこ「嘘でしょ!?」

ここあ「ほんとだよー。でも、いまどこにいるのかわかんなくなっちゃって…」

こころ「大きな木があって地上に出るのに苦戦していたところだったんです」

絵里「は、ハラショー」

にこ「まったく。無茶するんだから…先生たちはどうしたのよ?」

こころ「バステール島で捕まえたカブト虫を東京へ送れるかどうか交渉していたみたいです」

にこ「まあ…とにかく、二人とも無事でよかったわ」ナデナデ

ここあ「えへへ。おねえちゃん、だいすき♪」ギュー

にこ(宝物が埋まってる…か。確かに私にとっては最高の宝物ね)ギュ

真姫「…っていうお話よ」

花陽「そ、そんな話だったっけ…?」

真姫「まあ本来は金目の物が埋まっててその資金で故郷に教会を建てた…みたいな話だったと思うけど」

穂乃果「ロンドン橋まで行った意味は…?」

真姫「そう言われても…ロンドン橋は実際に出てくるし、そういう話だからとしか言いようがないわ」

希「それで結局、先生方はヘラクレスをゲットできたん?」

花陽「ダメだったみたい…」

『ご、ごめんにゃ。気がついたら二人がいなくなってて…』
『いいですよ。無事だったんだし…先生、ここあのために木に登ってまでカブト虫探してくれたんですよね?』

にこ「それに、私の誕生日に凛がくれたコクワガタ。ここあのお気に入りみたいだし」

凛「それはよかったにゃ♪」

【アルパカ小屋】

穂乃果「毛を刈ったら細くてヤギみたいになっちゃったね…」

アルパカ「メ゙ェ?」

ことり「あ。ヤギといえば…橋にまつわる有名な童話があるよね♪」

凛「ヤギの童話って、オオカミさんが出てくるやつですかー?」

ことり「ううん。それじゃなくて、確かノルウェーの童話だったかな…」

29: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:13:17.81 ID:PLNQokfT
穂乃果「私は小さいヤギのホノガラドンだよっ♪」

ことり「私は中くらいのヤギのトリガラドン♪」

凛「鶏ガラってヤギじゃなくて鶏だよねー?」

ことり「細かいことは気にしちゃダメ」

花陽「そして私は大きなヤギのパナカヨドンですっ!」

凛「三匹のヤギさんは、とっても仲良し。今日も三匹そろって草を食べに行くにゃ」

穂乃果「なにこれ?ずいぶん細い橋だなぁ…これじゃみんな一緒に渡れないよ」

凛「おいしい草がある場所は、橋を渡った向こうなんだよねー」

ことり「大きくて立派な橋に架け替えればいいんじゃないかなぁ?」

花陽「じゃ、じゃあ私が作るね…」オリオリ

穂乃果「紙なんか折ってどうするの?」

ことり「おなかすいたね。穂乃果ちゃん…」

花陽「できた♪」

穂乃果「わあー!立派な橋ができてる!?どうやって新しい橋を架けたの?」

花陽「う、うん。びっくりするかもしれないけど…私、折り紙得意だから」

ことり「おりがみって…折り紙?」

穂乃果「そうじゃなくて橋を…え、これってまさか…折り紙!?」

花陽「うん。紙を折って作った橋だよ」

ことり「すごいなぁ…見た目は折り紙には見えないよね」

穂乃果「触ってみると確かに紙っぽい…でも、紙の橋って渡れるのかなぁ?」

花陽「一人ずつ渡れば大丈夫だと思うよ」

穂乃果「よ、よーし。じゃあ一番小さい私から行くよ!」

ことり「小さい…かなぁ?」

希「穂乃果ちゃんもなかなかやけど、二人に比べたら小さいやろね♪」ムフフ

にこ「いや、どこ見て言ってんのよ…」

穂乃果「そーっと…うん。普通に歩ける…曲がったりもしないみたい」

「待ちなさい!」

穂乃果「わぁ!?ご、ごごごごごめんなさいぃ><」

凛「小さなほのヤギさんが橋の真ん中まで渡ったところで、おそろしい魔物の声が聞こえてきたにゃ」

30: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:16:02.50 ID:PLNQokfT
「私の橋の上に勝手に別の橋を架けるなど許しませんよ。いったい誰です?」

穂乃果「おそろしいっていうか、なんか聞き慣れた声なんだけど…」

「答えなさい!何のために橋を渡るのです!?」

穂乃果「は、はい。私は小さいヤギのホノガラドンです。橋の向こうに美味しい草があるから食べに行こうかなって…」

「草ですか。しかし穂乃果は草を食べることはできませんよ。今から私が穂乃果を食べるのですから!」

穂乃果「ひいぃ!?そ、そんな…私みたいに小さいヤギより、穂むらのお饅頭のほうが美味しいですよ」

「それもそうですね…では、饅頭を置いていきなさい」

穂乃果「今は持ってません。私の後に来る別のヤギさんが持ってますよ」

「そうですか。では饅頭を待つとしましょう…穂乃果はもう行っていいですよ」

穂乃果(よかったぁ…でも、ことりちゃんたち大丈夫かな?)

真姫「おそろしい魔物にしては甘すぎない?」

希「甘党だけに…」

凛「ちょっと寒くないかにゃー?」

花陽「穂乃果ちゃんは無事に渡ったみたい…」

ことり「じゃあ、次は中くらいの私が行くね」

花陽「うん。気をつけてね…」

凛「続いて、中くらいのヤギさんが紙の橋を渡っていくにゃ」

「止まりなさい!」

ことり「ちゅん!?」

「またヤギですか。饅頭を置いていきなさい」

ことり「私は中くらいのヤギのトリガラドンです。草を食べに行くんです…お饅頭は持ってません」

「何ですって?ならば、ことりは草を食べに行くことはできませんよ。私が今ここで、ことりを饅頭にして食べるのですから!」

ことり「それって、ことりじゃなくて“ひよ子”だよね?」

「では“ひよ子”を置いていきなさい」

ことり「甘い物もいいけど、夏は熱中症予防に塩分も摂ったほうがいいですよ。おにぎりなんてどうですか?」

「ふむ。それも一理ありますが…」

ことり「私の後から来る別のヤギさんが、大きなおむすび持ってますよ♪」

「そうですか。ではおむすびを待つことにします。ことりはもう行っていいですよ」

32: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:22:24.30 ID:PLNQokfT
凛「二人が渡りきるのを待っている間、大きなヤギさんは退屈なので大好きなアイドルの曲を聴いていたにゃ」

\♪キャナイドゥーアイテーキベービ/

にこ「イヤホン使ってるのに音がだだ漏れじゃない」

真姫「安物使ってるからそうなるのよ」

花陽「ことりちゃんも無事に渡ったみたい…私も行こうかな」

凛「最後に大きなヤギさんが橋を渡っていくにゃ」

「ひきかえせ!」

花陽「ふふふーん♪ふふふーん♪」

凛「ノリノリで鼻歌うたいながら…大きなヤギさんはおそろしい魔物の声にも気づかず渡っていくにゃ」

「ひきかえせ!引き返したほうがいいぞ!」

花陽「ちょっとの勇気と♪情熱でっしょー!」

「ひきかえせ!><」

希「全然聞こえてないみたいや」

にこ「どっかで見たわねこれ」

絵里「“地球のへそ”ね」

「くっ。このまま渡らせるものですか!」

バリバリ

花陽「ピャァ!?」

凛「なんと、紙の橋を突き破って大きなヘビが姿をあらわしたにゃ!」

海未「あなたは大きなヤギですね?おむすびを寄越しなさい!」

花陽「う、海未ちゃん…じゃあ、あの細い橋みたいなのはヘビさんの体だったんだ…」

海未「そうですよ。気づかず渡ろうとした獲物に巻きつき、噛みつき、食べてしまう…今までもそうしてきたのですから」

花陽「え、えーと…おむすびが欲しいんですか?」

海未「もちろんです。さあ、出しなさい!」

花陽「は、はい。どうぞ…」

海未「よろしい。では花陽も行っていいですよ」

凛「大きなおむすびをもらったヘビさんは喜び、かよちんも無事に橋を渡っていったにゃ。…ところが」

海未「な、何ですかこれは…ただの紙じゃないですか!?」

凛「大きなおむすびに見えた物は、かよちんが本物そっくりに作った折り紙のおむすびだったんだよねー」

海未「よくも…よくも私を騙しましたね!?絶対に許しません!」

33: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:25:08.56 ID:PLNQokfT
凛「怒ったヘビさんはヤギたちを追いかけていったにゃ」

真姫「っていうか、帰りも橋を通るんだから待ってればいいんじゃないの?」

絵里「きっと、おなかが空いて待ちきれなかったのね…」

海未「私はソノダ砂漠から来たガラガラヘビですよ!ガラガラドンだけに!」

凛「がらがらどん?」

絵里「ええ。本当は三匹のヤギの名前はみんな同じで、三匹ともガラガラドンっていう話だったと思うわ」

凛「へー」

海未「見つけましたよ…花陽!」

花陽「海未ちゃん…」

凛「三匹のヤギさんが仲良く草を食べてるところに、ガラガラヘビさんが来たよ><」

海未「さーて、誰から食らってやりましょうか…」ペロリ

穂乃果「おなか空いてるの?海未ちゃんもおいでよ。一緒に食べよう♪」

海未「私は草など食べませんよ」

ことり「草じゃないよ。お弁当♪」

海未「えっ。…いや、ことりと穂乃果は何も持ってないはずでは?」

穂乃果「お饅頭は持ってきてないけど、お弁当はあるよ。ほら♪」

ことり「私は、今日はチーズケーキを作って持ってきたの♪」

花陽「今度は本物のおむすびだよ。よかったら海未ちゃんも食べて♪」

穂乃果「はい、海未ちゃん。あーん♪」

海未「…穂乃果///」

凛「プランタンの三人に囲まれて楽しくお昼を食べたヘビさんは、もう動物を襲ったりしなくなったにゃ」

希「めでたし、めでたしやね」

真姫「いや、そんな話だったっけ?」

ことり「だいぶマイルドな味付けにしてみました♪」

穂乃果「まあ、相手が魔物さんでも花陽ちゃんが尖ったツノでグサリ!なんてするわけないし…」

海未「そもそもどうしていつも私がヘビ役なんですか…」

穂乃果「えーと…海未ちゃんだからウミヘビ?」

海未「砂漠のガラガラヘビじゃなかったんですか?」

絵里「恵まれた役でよかったじゃない。ちょっとうらやましいわ…」

花陽「絵里ちゃんも、おむすび食べたかったの…?」

34: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:30:47.44 ID:PLNQokfT
絵里「おむすびっていうか…」

『あーん♪』

にこ「でもこれ、ロンドン橋の話と違って橋が重要な役割を果たしてるわよね」

希「そやね。橋の強度の問題で一匹ずつしか渡れない状況を作ることで、お話がこういう展開になってるわけやし」

真姫「橋といえば、ヘビーな展開に定評のあるグリム童話もあるわよ」

凛「それって怖い話ー!?><」

希「夏らしくなってきたね♪」

花陽「ど、どれのことを言ってるの…?」

絵里「ハラショー!」

希「ある国に、それは大きくて強い暴れイノシシがいて…畑を荒らし、家畜を襲い、散々悪さをして人々を困らせてたんよ」

絵里「わ、私がイノシシ役なの?」

希「あまりの凶暴さに猟師も兵士も山賊さえ誰も大イノシシのいる森には近付かなくなったそうや」

絵里「うふふ。今度はチョコレート工場を襲撃しちゃおうかしら♪」

祖母「こうなったら…やるしかないわね」

亜里沙「おばあさま…」

希「国王は、あの大イノシシを退治した者には大切な孫娘を嫁にやると御触れを出した。苦渋の決断やね」

英玲奈「フフフ…獣退治か。悪くない」

あんじゅ「私たちにとっては造作もないこと…」

ツバサ「私たちが必ず仕留めてみせるわ!」

希「やって来たのは勇敢な三姉妹。長女と次女は計算高く狡猾な人物で、私欲のために。優しい三女だけは正義感からイノシシ狩りを引き受けたん」

ここあ「わあー!おねーさん、とってもキレイ!」

あんじゅ「なあに?子供がこんな森にいたら危ないわよ。イノシシに見つかる前に早く逃げて」

ここあ「あのね、これあげる!」

あんじゅ「これは…何?」

ここあ「ここあがつくったの!ヘラクレスだよー♪」

希「ここあちゃんはバステール島のヘラクレスオオツノカブトが諦めきれなくて、夏休みの工作でヘラクレスのツノに似せた大きな黒い槍を作ったんやって」

あんじゅ「ふふふ…かっこいいわね。ありがとう♪」ナデナデ

ここあ「えへー♪」キャッキャ

36: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:37:01.84 ID:PLNQokfT
こころ「その槍は、正しい心で手にしたとき本物以上の力を発揮します」

あんじゅ「これが…?」

こころ「ええ。あなたなら、あの大イノシシにも負けることはないはずです」

ここあ「がんばって!おねーさん♪」

あんじゅ「ええ。ありがとう…」

希「小さな姉妹が森を出ていこうとした、そのとき…!」

絵里「くんくん…チョコレートの匂いがするわ。誰かが持っているのかしら?」

あんじゅ「!」

絵里「きっと、あの子供ね♪」ギラリ

ここあ「えっ」

希「ここあちゃん目がけて突進する大イノシシ!」

穂乃果「ここあちゃんだからチョコレートの香り?」

にこ「んなこと言ってる場合じゃないわよ!?」

あんじゅ「大イノシシ!こっちよ!」

希「あんじゅは黒い槍を振りかざし、大イノシシに立ち向かう!」

亜里沙「だめーっ!!」

あんじゅ「え?…きゃあ!?><」ドン

希「女の子の叫びに驚いてイノシシの突進を避けきれず、あんじゅは槍を落としてしまった」

あんじゅ「武器ならまだあるわよ。何も持たずにイノシシ狩りに来ると思う?」

亜里沙「やめて!お姉ちゃんを撃たないで!」

あんじゅ「姫さまは下がってて。危ないわよ」

亜里沙「いや!」

絵里「あ、亜里沙…」

あんじゅ(子供の工作の槍なら、人が死ぬことはないはず…これを使わせてもらうわ)

38: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:39:35.28 ID:PLNQokfT
希「あんじゅは素早く槍を拾い、投げつけた!」

絵里「亜里沙、危ない!」ドン

亜里沙「きゃ><」

ドスッ

絵里「…っ!」

亜里沙「お姉ちゃん!?」

あんじゅ「え」

希「おもちゃの槍を亜里沙ちゃんに投げつけて、怯んだ隙に大イノシシを撃つつもりやったんやね。でも…」

亜里沙「お姉ちゃん!ひどい…どうして!?」

あんじゅ「い、いや、そういう依頼だし…っていうか、紙の槍のはずなのに」

絵里「だ、大丈夫よ亜里沙…」

亜里沙「お姉ちゃん!すぐ手当てをしなくちゃ…」

絵里「いや、本当に大丈夫。…ほら」

希「大イノシシの頭を貫いたように見えた槍は…ポニーテールの髪に引っかかっただけやんな」

亜里沙「な、なーんだ…びっくりしたぁ」ペタン

あんじゅ「よかった…のかしら?」

亜里沙「お姉ちゃん。守ってくれたのは嬉しいけど、もういたずらしちゃダメ!」コツン

絵里「いたっ><」

ここあ「わあー!おひめさまがイノシシさんをやっつけちゃった♪」

祖母「この場合はどうしたら…亜里沙は亜里沙と結婚できないし」

亜里沙「亜里沙、お姉ちゃんのお嫁さんになりたい♪いいでしょ?おばあさま」

えれあんツバ「えぇ!?」

祖母「そうねえ…今回は一応姉妹じゃないということで、良しとしましょう♪」

絵里「おばあさま…」

亜里沙「Хорошо!ありがとう、おばあさま♪」

ここあ「おめでとー!」キャッキャ

こころ「おめでとうございます♪」

39: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:40:30.64 ID:PLNQokfT
絵里「亜里沙…」

亜里沙「えへへ。お姉ちゃん…大好き♪」チュ

あんじゅ「お幸せに…」ゲンナリ

ツバサ「私たち、何しに来たのかしら…」

英玲奈「ふむ…まあいい。帰るぞ」

にこ「どこがグリム童話よ!?」

ことり「もうお話の原形をとどめてないし…橋が出てくるところまでいかなかったよね」

真姫「原作ではイノシシ退治の後、人間同士の醜い争いがメインよね」

希「人間以外の脅威を力ずくで取り除いた結果がそれやから、結局はイノシシが退治されないほうがマシやったんやないかな?」

絵里「でも私、亜里沙と結婚するの?…亜里沙はまだ中学生よ?」

凛「それって、結婚できる年齢だったらしたいってことー?」

絵里「そ、そうじゃなくて…///」

穂乃果「ああっ、でも橋どころか、日本は遥か遠い海の向こうだよ。なんだか家が恋しくなってきちゃった…」

にこ「ま、気持ちはわからなくもないわね」

希「ここあちゃんから送られてくるコクワガタの写真を嬉しそうに見てたもんね。にこっち♪」

にこ「送ってんのはこころよ。ここあはいつも通りクワガタと戯れて、飽きたら別の虫探しに行っちゃうんだから」ヤレヤレ

真姫(なんだかんだで、三人とも大したシスコンね)クス

ことり「そういえばここ、ちゃんとお箸もあるんだね」

真姫「まあね。畳の部屋を作ったくらいだし、うちの別荘だから基本的には日本人向けっていうか…日本食を食べることを想定して必要な物も置いてるの」

花陽(川や海峡を挟んで陸地と陸地を繋ぐ橋。そして食とともに命をつなぐ箸。どちらも私たちには欠かせない物だよね)

41: 名無しで叶える物語(王都図書館司書室) 2017/08/05(土) 19:41:22.28 ID:PLNQokfT
海未「そういえば…気になったんですけど」

花陽「どうしたの?海未ちゃん」

海未「花陽は折り紙で橋を作っていましたが…」

花陽「うん」

海未「ここ、基本的に無人島ばかりなので橋が架かっていませんよね?本土や島から島へ渡るには船が必要です」

穂乃果「そうだね。船旅も楽しいけど…」

海未「もしかして…できます?」

ことり「それって…橋を架けて渡ろうってこと?」

にこ「何言ってんの。あれは童話の中の話でしょ」

花陽「アハハ。そうだね…材料がないとできないよ。そんなに大きな橋だったら紙もたくさん必要だし…」

絵里「…ちょっと待って。材料があればできるってこと?」

花陽「まあ…できるけど」

希「うそやろ!?」

凛(地図には決して載らない不思議な橋が…もしかしたら、あなたのすぐ近くにあるかもにゃ♪)



おわり