1:2016/01/01(金) 18:48:21.84 ID:
よし、こんなもんかな



雑巾で床を隅々まで拭いて、少しだけ額に流れる汗


もうだいぶ暖かくなってきたみたいで、桜なんかも咲いてる


ウチはせっせと部屋のお掃除



あまりの快晴で思わずうとうとしそうになるけれど、今日は予定がたくさんあるからぐっと我慢我慢
3:2016/01/01(金) 18:51:30.12 ID:
午前中に部屋のお掃除を済ませなきゃ


あとは窓を拭いて、ゴミをまとめて────



っと、今何時だろう?ああそうだ時計はないんだった


携帯電話を取り出して時間を確認する


あちゃー…だいぶ時間おしてるなぁ
4:2016/01/01(金) 18:54:28.83 ID:
ほら、部屋のお掃除をしてると、目に入った雑誌ってつい読んでしまうやん?


だから、これは仕方ない。自分にそう言い訳をして



たたたっ。新聞紙を取りにキッチンにかける


一枚剥がして、くしゃくしゃにして窓を拭くと
5:2016/01/01(金) 18:57:34.64 ID:
まぶしい日差しとにらめっこ


目を閉じてそのまま眠りこけてしまいそう


普段はとっても大好きなポカポカ陽気なお日様がウチを惑わす


くすくす。だめやね。なんかもうウチをリードしてくれる人がほしい



でないと、いつまでたってもこのお掃除終わりそうにないから────
6:2016/01/01(金) 19:03:05.69 ID:
お昼をちょこっと過ぎたころ



コンビニでお昼ご飯買ってきた


既にお腹はペコペコ。30分くらい前からお腹が救難信号を出しっぱなしだから



助けてあげんとな
7:2016/01/01(金) 19:06:10.64 ID:
あれ………?


お箸がない……

まぁ、いいや割り箸を使おうっと



これを食べた後はゴミを捨てて、身支度をして出ないと


他にすることあったっけ?


まぁ、きっと大丈夫。そんな曖昧でいい加減な判断を出して、割り箸をパチンと割って


いただきまーす♪
8:2016/01/01(金) 19:10:29.57 ID:
──── ☆────



よし、ゴミ捨ても終わった


これで家でやることは終わりかな?


少しだけゆっくりしたいけど────


でも、少し時間も押してるから出る準備をしないと
9:2016/01/01(金) 19:16:26.61 ID:
床に置いていたひとつの写真立てを手に取る


μ'sの9人でやった講堂ライブの写真


これは肌に離さずに持っていたいからずっと残してた


この一年を思い出しながら


少しだけクスって笑って、少しだけ涙ぐんで少し大きなカバンに入れた

よぅし、準備万全
10:2016/01/01(金) 19:19:26.15 ID:
玄関まで歩み、振り返る



何もない空間


3年前、ウチが初めてこの家に来たときとおんなじ


一度深呼吸をして呼吸を整えて一礼





「お世話になりましたっ!」
11:2016/01/01(金) 19:22:19.17 ID:
ウチな、東京を離れるん



ここが嫌だとか、あそこが良いとかそういうのじゃなくて



次のステップに進むために


ここを離れる事にした
12:2016/01/01(金) 19:24:12.98 ID:
このことは誰も知らない


エリちにも他の皆にも、都内の大学に行くって嘘言ってる



だからお見送りはナシ


だって辛いやん
13:2016/01/01(金) 19:27:21.58 ID:
あの日の


最高の笑顔が最後の光景の方がウチは好き


今日会ってしまったら、きっとウチ、ボロボロになると思う

しわくちゃな顔が最後なんてなんかウチっぽくないし


来週頃に、「あれ?希は?」みたいになって、「あー。実はウチ今九州にいるん。いやーこっちは暖かいなぁ」ってとぼけた態度でいた方が楽
14:2016/01/01(金) 19:29:03.40 ID:
駅に向かう道を歩いていると、交差点に差し掛かった


右に曲がると駅だけど────

左に曲がると音ノ木坂


最後だしちょっと寄ってみようかな?


ううん、やめとこ。辛くなるだけだから
15:2016/01/01(金) 19:31:21.99 ID:
そう思いながらも

足は自然と音ノ木坂へと歩んでいた



途中、音ノ木の制服を着た娘数人とすれ違った


真新しい制服。きっと新入生なんやね


はちゃめちゃで元気いっぱいな生徒会長がいるけど

これから頑張るんやよ
17:2016/01/01(金) 19:33:04.75 ID:
「希?」


体がピクリと反応した


聞きなれた声


今日一日は聞きたくなかった声


「エリち……」

振り返るとそこにはエリちがいた
18:2016/01/01(金) 19:35:13.97 ID:
「奇遇ね。あなたも音ノ木坂に?実は私も穂乃果に呼ばれて来たの。いったい何の用かしら?」


そういえば昨日穂乃果ちゃんからメール来てたな


ウチは用事があるって断ったけど、エリちはそれを知らないみたい


「う、ううん。ごめん。ちょこっと用事あってな。ここに来たのも偶然なんよ」
19:2016/01/01(金) 19:37:24.60 ID:
できるだけ、できるだけ当たり障りのない返答をしよう

そしてエリちと別れたら、まっすぐ駅に向かおう


「そうなの?なんの用事?」

「くすっ、秘密♪詳しくは来週まで待ってな?」

「気になるわね……教えなさいよ」

「秘密ひみーつ♪」


もうしばらく会えないというのに


早くエリちと別れたいだなんて心が苦しい
20:2016/01/01(金) 19:39:05.57 ID:
「それにしても大荷物ね。その中身も秘密?」

「え?ああ、うん。これも秘密や」

「それじゃあ、ウチはそろそろ行かんと。なんせ多忙だからなー」


ほななー。そう言ってくるりと身をひるがえして

一歩踏み出したんだけど


何かに引っかかって──── ううん。引っ張られて



「どこへ行くの?」
21:2016/01/01(金) 19:41:17.73 ID:
エリちがしっかりとウチの腕を掴んでいた


「どこって秘密──── 」

「なんの荷物なの?ずいぶんと量が多いわね。まるで──── 」

「旅行……いえ、お引越しみたい」



心臓がきゅうってなった
22:2016/01/01(金) 19:43:11.19 ID:
「な、何のことなんかな?ウチにはよくわからんて」

「今朝。希の家の前に引っ越し業者が来ていたわ」

「お隣さんがお引越しみたいで」

「希と話していたわ。よろしくお願いします。って言ってたわよね」

「お隣さんとはよくしてくれてたから、荷物を慎重に運んでって」

「希っ!」
23:2016/01/01(金) 19:45:48.08 ID:
ウチを掴んでた手は、よりぐって力が入って


あぁ………一番知られたくない人に知られてしまったなぁ


まっすぐ駅に向かえばよかったなぁ


聞きなれた声聞こえても無視してればよかったなぁって


後悔なのかなんなのか、よくわからない涙が溢れた
24:2016/01/01(金) 19:46:33.89 ID:
──── ☆────

ごめん

許さない


ごめんて

絶対許さない


ゆるして

無理
25:2016/01/01(金) 19:48:24.24 ID:
あなたのこと、絶対許さない

ホントごめんて


許さないって言ってるじゃない

許してほしかったら、これから毎日電話をして

最低でも2時間。お話しする時間を作って


あなたの顔が見たいわ

週に1度は必ずテレビ電話でお話しをしましょう


あなたの字も見たいわ

手紙を送って。私も返すから
26:2016/01/01(金) 19:49:36.96 ID:
あなたに直接会いたいの

半年に1度……ううん。月に1度は会いましょう。私も会いに行くわ


わがままやね

そうね。わがままなの


わがままな私の事嫌い?

ううん。大好きやで
27:2016/01/01(金) 19:50:52.15 ID:
──── ☆────

ピピピピッ


「う、ん……」

まだ慣れてない目覚まし時計のアラームを止めて

お布団の中をもぞもぞと動く


起き上がり、大きなあくびをして、ぐっと背伸びをする
28:2016/01/01(金) 19:52:08.91 ID:
ひとりじゃ大きなこのベッドをもそもそと這い出て


まだぼやけた視界のまま、少しだけ賑やかな隣の部屋への扉を開けた



あれから5年

今、ウチはエリちと一緒に暮らしてる


おしまい
29:2016/01/01(金) 19:53:09.56 ID:
あけましておめでとうございます。
最後まで読んてくれた方ありがとうございました。

すっごく短いので、短編でことえりも投下します。
30:2016/01/01(金) 19:55:04.99 ID:
短編-ことり「ことりの館へようこそ」


ことり「ははっ、ようこそ子猫ちゃん」(精一杯のイケメンボイス)

絵里「は?」

ことり「いつまでそこで呆けてるのさ。こっちにおいでよ」

にこ「何言ってるの?ここ部室よ?」

ことり「部室?ははっ、面白い事言うのだな。絵里は」

絵里「ことり?何かあった?辛い事があったら相談に乗るわよ」

絵里「とにかくそこに座って」

ことり「………」ギシ

ことり「はぁ…………」

絵里(ことりが絶対しないであろう、頭を抱えるポーズしてる)
31:2016/01/01(金) 19:56:16.46 ID:
ことり「ねぇ………やっぱりおかしいかなぁ…?」

絵里「だいぶ変よ」

ことり「やっぱり……」

絵里「本当何があったの?」

ことり「えと……海未ちゃんは王子様とお姫様、どっちのイメージ?」

絵里「そうねぇ……王子様ね」
32:2016/01/01(金) 19:58:02.79 ID:
ことり「じゃあ穂乃果ちゃんは?」

絵里「うーん………王子様かしら?お姫様ってイメージはないわね」

ことり「じゃあことりは?」

絵里「お姫様ね」

ことり「はぁ………」

絵里(私何か悪い事言った……?)
33:2016/01/01(金) 19:58:59.67 ID:
ことり「ことりね……ずっと前からね……」

絵里(語りだした)

ことり「王子様になりたかったんだ…」

絵里「………」

ことり「………」

絵里(…終わった)

絵里「えと、ことりは今のままでも充分魅力的よ?」
34:2016/01/01(金) 20:00:17.14 ID:
ことり「どうしたら王子様になれるのかなぁ……?」

絵里「ええと……ことり?」

絵里「さっきも言ったけど、ことりは今のままでも充分魅力的よ?」

絵里「視野を広げるのは良い事だけど、無理はダメよ?」

ことり「………ねぇ絵里ちゃん」

ことり「王子様の条件ってなぁに?」

絵里(聞いてない)
35:2016/01/01(金) 20:01:09.28 ID:
絵里「そ、そうねぇ……」

絵里「しっかりとしてて、凛として、女性をリードできる………」

絵里(あれ…?穂乃果はこの条件に当てはまらないわ)

ことり「しっかり……凛と……」

絵里「ごめんなさい。訂正するわ。ええと……」

ことり「うん。わかった!しっかりして凛として女性をリード、だね」

絵里「え、ああ違うの。って行っちゃったわ……」

絵里「………まぁ明日になったらいつも通り、よね?」
36:2016/01/01(金) 20:02:30.28 ID:
翌日 登校時

絵里「あ、あの……ことり?」

ことり「なんだい絵里?」

絵里「その、もういいのよ?」

ことり「ははっ、絵里は今日もおかしいことを言うんだね。おっと」

ことり「水たまりだよ。気を付けて」

絵里「え、ええ……」
37:2016/01/01(金) 20:03:48.55 ID:
ことり「絵里が転んで大事な顔に傷がついたら大変だもんね」ニコッ

絵里「………っ!」キュン

絵里(え、なに……?なんでときめいちゃってるのよ私!)

ことり「転んだりしないよう手を繋ごうか。さ、手を握って?」

絵里「は、はい……///」ギュ

絵里(どうしてかしら…こんなことりもいいかもって思ってる…)
38:2016/01/01(金) 20:05:21.51 ID:
ことり「きゃわああああああっ♡」

絵里「!?」ビクッ

ことり「にこちゃん!そ、それっ…!?」

にこ「うわっ、なによ?」

ことり「それ、そのキーホルダー……!」

にこ「え?これ?昨日穂乃果とゲーセン行ってとった景品だけど…」

ことり「かわいぃぃぃ………」ウットリ
39:2016/01/01(金) 20:06:19.98 ID:
にこ「欲しいならあげるわよ」

ことり「え、いいの…?」

にこ「別にいいわよ。はい」

ことり「にこちゃんありがとう♪」

にこ「大事にしなさいよね。それじゃ」

絵里「…………」
40:2016/01/01(金) 20:07:12.46 ID:
ことり「絵里ちゃぁん♪」

ことり「みてみて、クマさんのキーホルダー。とっても可愛いぃー♪」

絵里「………」

ことり「ふふー♪さっそくつけちゃおっと」

ことり「えへへ……可愛いなぁ♡」


絵里(いつものことりも悪くないわ)


おしまい
43:2016/01/01(金) 20:24:23.50 ID:
いいね
>>30のにこちゃんどっから出てきたし
46:2016/01/01(金) 20:59:29.61 ID:
>>43
ごめんなさいミスです
エリちのセリフです
本当どっからにこにー出てきたし
48:2016/01/02(土) 01:14:24.40 ID:
とても良かった
乙です
49:2016/01/02(土) 01:44:49.03 ID:
この空気感好きだな乙
50:2016/01/02(土) 04:54:30.70 ID:
のぞえりもことえりもとても良かった
乙です